統計学が最強の学問である(西内啓 著)を読んでみて、
営業での「仮説・検証」について考えてみました。
この本の冒頭の部分では、
最近の「ビックデータ」と呼ばれるITのトレンドについて触れています。
ビックデータとは、
ソーシャルメディアに投稿された記事、
ECサイトでの購入履歴、
ICカードの利用履歴など、
データセンターに蓄積されている膨大な情報を分析して、
そこからビジネス上意味のある結論を導き出そうとする
コンセプトを指しています。
様々なIT企業がこのビッグデータの必要性を声高に主張しています。
ビックデータでは膨大な情報を分析することが前提となるので、
統計学は重要な役割を果たすはずです。
しかし、「統計学が最強の学問である」の著者、西内氏は、
その書籍の冒頭で、
このビックデータを否定的に触れています。
ビックデータそのものを否定的に言っているのではなく、
ビックデータをとりまいている現状について否定的に捉えているようです。
多くの企業がIT企業の売り文句にひっかかってしまい、
何でもかんでも「ビックデータ」という名のもとに
データ分析に安易に投資をしていることを問題視しています。
悪い例として挙げられていることの中に、
企業のブランディング調査の例がありました。
商品を購入した顧客にアンケートを実施し、
その企業の広告を見たことがあるか、
その企業についてどんなイメージを持っているか、
などを調査したそうです。
その結果、「○○%の顧客はあなたの会社に良いイメージを持っています」
のようなことが分かったということです。
このことが分かっても、その企業にどんなメリットがあるのでしょうか?
確かにこれをもって「ビックデータは凄い」と言わせるのは無理がありそうです。
西内氏はビックデータを否定しているのではありません。
統計学についての正しい理解と知識があってはじめて、
ビックデータは経営革新のツールとして活きてくると言っているようです。
そんな話を読んでいるうちに、思ったことがありました。
それは、「仮説と検証」という言葉です。
ビックデータのような大規模なデータ分析は、ただ闇雲に行えばいいのではなく、
何らかの仮説を持って臨むべきです。
つまり、このデータには、こんな情報が眠っているのではないか。
このデータから、こんな結論が言えるのではないか、
という想定です。
その仮説が正しいのか・間違っているのかを検証するために、
実際のデータ分析を行うという考え方です。
「どんな情報があるかわからないから、とりあえず分析してみよう」
「何か新しことが分かるかもしれないから、とりあえず分析してみよう」
ではダメなのです。
西内氏は統計学のリテラシーを高めることで、ビックデータを有効に使えると説明しています。
もちろん、そういったリテラシーは必要なことだとは思います。
しかし、それ以上に重要なのは、経営者あるいは担当者が、
何からの仮説を持つこと、予想を持つことです。
そのことで、調査やプロジェクトに方向性や一貫性が出てきます。
何のための調査なのか、
何を明らかにするべきなのか、
その結果、どんな経営判断につながるのか、
などが明確になってきます。
実は西内氏もその書籍の中で、次の3つのことを強調していました。
可能性: そのことは可能なのか
実現性: 可能であっても、実際の環境で実現できるのか
収益性: そして、それはコストを差し引いも利益がでるのか
このように、データ分析について、
その意味と方向性、具体的なプロセスが明確になって行けば、
ビッグデータも経営に有用な道具となり得ると思います。
「仮説と検証」は、ビックデータ以外にも様々なプロジェクトで有効な考え方です。
日々の営業活動においても、
長期的な営業戦略を構築する場合おいても、
有効です。
「どのようにして、売上を達成するのか」
そのことについての仮説が全くない中で、
闇雲に営業するのであれば、
大きな成果を得られないでしょう。
しかし、
「こうすれば売る上げがあがるはず」という何からの仮説に基づいて、
それを検証すべく、行動を起こせば、
その結果、
うまく行った場合でも、
うまくいかない場合でも、
さまざまな経験や知恵を得ることができます。
それをもとに、また新しい仮説を立てる。
その仮説と検証のサイクルをどんどん回して行くことが、
遠回りな様で、実は着実に成功に近づく道なのです。