米中首脳会談がフロリダで行われているさなか、アメリカがシリアを突如空爆したことは、世界中に衝撃を与えた。
シリアが自国内の反政府勢力領内に対して化学兵器を使用したのがその2日前。子供を含む多くの市民が攻撃によって苦しんでいる痛ましい様子がテレビで何度も放映された。
従来から人権を大切に考えるアメリカ国民の感情の高まりに後押しされる形で、トランプ大統領がシリア空軍基地への空爆を決断。国連決議や他国との連携もなく、アメリカ単独での攻撃となった。
恐らく、世界中のほとんどの人が、アメリカがこれほど迅速に武力行使に出ることを予想できなかったのではないだろうか。
トランプ大統領は、大統領選挙期間中からずっと、「世界の警察官は辞める」と公言していたはず。自国民に被害の出ていないことにわざわざ介入することはないと誰しもが思っていただろう。
しかし、攻撃は実行された。NSC(国家安全保障会議)がトランプ大統領に武力行使の選択肢を提示して数時間で決断したという。
アメリカ政府が大きな方針転換をした可能性があるだろう。
シリアが化学兵器を使用したことが明るみになる少し前に、影の大統領とまで言われているスティーブ・バノン氏がNSCの常任メンバーからはずれたことが報じられた。
NSCは、アメリカの安全保障政策における最高意思決定機関に位置付けられる。このNSCの常任メンバーは6名。そのうち4名が軍出身者だ。
バノン氏の更迭より前に、マイケル・フリン氏もロシアとの関係が明るみになったことで大統領補佐官を辞任し、NSCのメンバーからも外れている。
実は、バノン氏とフリン氏、両氏とも極端なタカ派で、アメリカ孤立主義を主張する人物だ。その2人がいなくなったNSCは伝統的な共和党の国際協調主義に戻ってたのではと推測される。
つまり、かつてのブッシュ政権のように、人道上の理由で世界の紛争に介入するという考え方だ。かつてのイラク戦争のように。
ただし、ブッシュ政権のときと異なるのは、今回の介入が緻密に練られた戦略ではなさそうだという点である。武力介入したはいいが、それを終結させる出口戦略がないと、紛争が泥沼化していく可能性は否定できない。
いずれにせよ、今回の予想外の武力行使により、世界が知ったことがある。それは、トランプ政権はオバマ政権とは異なり「実際に行動をおこす」ということだ。中国も北朝鮮もこのとを痛感したいに違いない。
アメリカは世界の警察官もどったのか、それともトランプ大領領の気まぐれの決断なのか。世界情勢はさらに不透明になってきたと言えよう。
(終わり)