ビズテリアへの寄稿に当たって、今回は、「なぜ大企業において業務改革が進みにくいのか」というトピックテーマをいただきました。
業務「改革」は、前回の組織変革などと共通するテーマともいえると思います。キーワードは、「改善」ではなく、「改革」。小さな改善の積み重ねではなく、抜本的な変化を求めるのが「業務改革」と定義づけるとすれば、変わることに対する抵抗があるという点で「組織変革」と同様の覚悟がリーダーやマネジャーに求められることは、同じでしょう。
しかし、一方で、人事制度や評価制度、組織編成などといった組織構造を変えることなく、「業務レベル」での改革を求められている場合、何が業務変革を推進するためのポイントとなるのでしょうか? パフォーマンス・コンサルタントの視点から、大企業において業務改革が進まない理由を考えてみたいと思います。
まず、考えたいのは、何のための業務改革なのか、ということです。一般に、業務改革は、生産性の向上など、パフォーマンスの向上のために行われると考えられます。では、そもそも、「パフォーマンス」とは何でしょうか?それは、単純な生産行動結果としての「成果」だけを指すのではありません。パフォーマンスとは、最終成果とそれを出すためのプロセスと業務遂行行動全体と定義づけられています。そして、期待されるパフォーマンスを出すための基本4条件と言われるのが、
業務改革を進める明確な目的とその目的が各個人の業務・業績評価とどのように関連するのか、といった「パフォーマンス・マネジメント」の視点からもその意義づけがされない限り、「上司(会社)がそういうから・・」など『やらされ』仕事になってしまうと、成果目標の共有もできていなければ、期待成果へのコミットメントを得ることもできない状態になってしまいます。
結果として、短期的な成果として確認できるタスクレベルの業務行動の小さな改善などにとどまってしまう、パフォーマンスを生成するプロセス全体のマネジメントやシステムとしてのパフォーマンス生成の構造が捉えられず、期待される成果を上げることができない根本原因への対処もできないまま、別の次元での何かの施策を打とうとするなどといった現象が繰り返し起こってしまうことが考えられます。
特に、成果の定義が曖昧である、成果を上げようが上げるまいが将来的な人事評価やプロモーションなどには、直接的に影響することはない、といったような「組織構造的な矛盾」を抱えている場合、なかなか業務改革は進みません。
そして、それが大きな組織になればなるほど、自身の業務と会社全体としての成果目標との間に隔たりを感じ、自分の貢献度の評価尺度がわからない、というような状況に陥りがち。そうなると、積極的に業務改革を進めたい、という動機が湧いてきません。
そのようなブレーキ(レジスタンス・フォース)となる要素をしっかりと見極め、高パフォーマンスを達成する条件と言われるパフォーマンス・マネジメントの基本条件を整えることも、業務改革推進に従業員のコミットメントを得るための重要なポイントとなるのではないでしょうか。
(終わり)