共創スクエア

株式会社インストラクショナル デザイン

大企業における業務改革の壁

パフォーマンス・コンサルタントの視点から

中原 孝子

共創スクエア

大企業における業務改革

ビズテリアへの寄稿に当たって、今回は、「なぜ大企業において業務改革が進みにくいのか」というトピックテーマをいただきました。

業務「改革」は、前回の組織変革などと共通するテーマともいえると思います。キーワードは、「改善」ではなく、「改革」。小さな改善の積み重ねではなく、抜本的な変化を求めるのが「業務改革」と定義づけるとすれば、変わることに対する抵抗があるという点で「組織変革」と同様の覚悟がリーダーやマネジャーに求められることは、同じでしょう。

しかし、一方で、人事制度や評価制度、組織編成などといった組織構造を変えることなく、「業務レベル」での改革を求められている場合、何が業務変革を推進するためのポイントとなるのでしょうか? パフォーマンス・コンサルタントの視点から、大企業において業務改革が進まない理由を考えてみたいと思います。

パフォーマンスとは

まず、考えたいのは、何のための業務改革なのか、ということです。一般に、業務改革は、生産性の向上など、パフォーマンスの向上のために行われると考えられます。では、そもそも、「パフォーマンス」とは何でしょうか?それは、単純な生産行動結果としての「成果」だけを指すのではありません。パフォーマンスとは、最終成果とそれを出すためのプロセスと業務遂行行動全体と定義づけられています。そして、期待されるパフォーマンスを出すための基本4条件と言われるのが、

  • ■ 明確な期待値(目標)の提示と理解(コミットメント)
  • ■ 適切なリソース (教育や資金や必要な人材設備なども含む)
  • ■ パフォーマンスを支援する仕組み(評価、褒賞など)
  • ■ フィードバック (定期面談という「結果」に対する判断時だけではなく、継続的なパフォーマンス支援としてのフィードバック)

業務改革と各個人の業務・業績評価

業務改革を進める明確な目的とその目的が各個人の業務・業績評価とどのように関連するのか、といった「パフォーマンス・マネジメント」の視点からもその意義づけがされない限り、「上司(会社)がそういうから・・」など『やらされ』仕事になってしまうと、成果目標の共有もできていなければ、期待成果へのコミットメントを得ることもできない状態になってしまいます。

結果として、短期的な成果として確認できるタスクレベルの業務行動の小さな改善などにとどまってしまう、パフォーマンスを生成するプロセス全体のマネジメントやシステムとしてのパフォーマンス生成の構造が捉えられず、期待される成果を上げることができない根本原因への対処もできないまま、別の次元での何かの施策を打とうとするなどといった現象が繰り返し起こってしまうことが考えられます。

特に、成果の定義が曖昧である、成果を上げようが上げるまいが将来的な人事評価やプロモーションなどには、直接的に影響することはない、といったような「組織構造的な矛盾」を抱えている場合、なかなか業務改革は進みません。

そして、それが大きな組織になればなるほど、自身の業務と会社全体としての成果目標との間に隔たりを感じ、自分の貢献度の評価尺度がわからない、というような状況に陥りがち。そうなると、積極的に業務改革を進めたい、という動機が湧いてきません。

そのようなブレーキ(レジスタンス・フォース)となる要素をしっかりと見極め、高パフォーマンスを達成する条件と言われるパフォーマンス・マネジメントの基本条件を整えることも、業務改革推進に従業員のコミットメントを得るための重要なポイントとなるのではないでしょうか。

(終わり)
パフォーマンス・マネジメント レベルとパフォーマンス向上のためのフォーカスポイント
(参考)Rummler and Brache's Nine Performance Variables
変革のドライブとブレーキ:Kurt Lewin's Force Field Analysis
(クルト・レヴィンのフォース・フィールド分析)
■この記事についてのお問い合わせ
株式会社インストラクショナル デザイン
共創スクエア
スペシャル・インタビュー
  • 女性活躍の正しい実践とは
  • 人を幸せにする経営
  • 日本の農業を世界に
  • 経営のマインドを取り戻し、将来のビジョンを描く
  • マイナンバー制度 導入に向けた不安に応える
  • 多様性ある社員をやる気にさせる人事制度を
  • 成長戦略にのっとったM&Aとは
  • 事業承継のポイントは、経営理念の確立と浸透
  • バランス・スコアカードで元気な日本的経営を取り戻そう
  • ソーシャルメディアはエンゲージメントを高める所
  • 「困ったこと」のビックデータ解析が、マーケティングの鍵に
  • 机上の空論にならない経営計画
  • 事業承継の最重要課
  • どんな会社でも能動的な営業・販売をすることなく、「顧客の欲求」を動かす事ができる。
  • 変容する中国で生き残る 戦略マップによる経営の可視化を
  • HIT法による業務の可視化
  • 「バズる」ブログ - その運営の裏にある組織風土とは
  • クラウド時代の業務改革
  • 中堅企業が取組む現実的な業務改革とは
  • 日本のベンチャーが世界で活躍する日
  • 組織変革のためのZERO経営とは
  • 組織は劇的に生まれ変わる
  • プロジェクトリーダーの育成
  • コミュニケーション不全を解消し、組織力を高める
  • サプライチェーン・マネジメントと業務改革
「経営に役立つ記事」セレクション
共創スクエア
特集「経営の可視化」
Information