共創スクエア

みのり経営研究所

多様性ある社員をやる気にさせる人事制度を

会社の風土、組織を診断し、社員のモチベーションを向上

代表取締役 秋山健一郎

共創スクエア

人が集まって仕事をする、というのが会社の姿だとしたら、その"人"について悩みを抱える会社が多いのは当然です。例えば、報酬は低くないのに社員のモチベーションが低い、あるいは社員数が増えたためにマネジメントがうまくできない、人材の多様化にともないマネジメントが難しくなった、など。

こういった課題を抱えている会社に対し、問題がどこにあるのか、そしてマネジメントのあり方から、人事評価や報酬体系までを含めた人事制度をどのように見直していけばいいのか。この課題に対応してきたのが、みのり経営研究所である。

代表取締役の秋山健一郎氏は、高度経済成長期の成功体験にとらわれない、社員の多様性を活かしていける会社にしていく必要があるという。

【ビズテリア経営企画 編集部】

高度経済成長時代の人事制度から脱却を

秋山 健一郎 (Kenichiro Akiyama)
株式会社みのり経営研究所 代表取締役
一橋大学商学部卒業。三井物産株式会社、いすゞ自動車株式会社、DHL Japan 等での実務経験を経て、ヘイコンサルティンググループ/パートナー、プライスウオーターハウスクーパースコンサルティングにて戦略コンサルティングサービスのパートナー。組織/人事/戦略分野のコンサルティングを中心に20年のコンサルティング経験。日本を中心にヨーロッパ、アメリカ等世界中の様々な企業を支援。
また2001年9月より2002年5月まではIBM Business Consulting Service(現在 IBM Japan)の人事部長としてPwccとIBMの人事制度統合を推進。
「インセンティブ制度による成果主義賃金導入マニュアル」、「評価と新賃金制度策定マニュアル」(日本能率協会マネジメントセンター)など組織・人事制度分野での著作、寄稿論文がある。

人事で困っている会社は、そもそも人事制度自体が古くなってしまったケースが多く、事業環境などの変化に対応した人事制度になっていないといったことがあると思います。このことが、社員のモチベーションが低い、生産性が低い、離職率が増える、といった問題につながっていきます。

大きな傾向としては、90年代以降、戦後の高度経済成長時代のモデルがうまくいかなくなっているということが指摘できます。かつては高度経済成長によって、みんなの所得が増えましたし、同質性が強い組織の中で、誰もが同じように昇給・昇格を望めたのですが、現代はそうではありません。

居心地のいいマネジメントの時代は過去

90年代はどの会社も、低成長に対応する試行錯誤の時代でした。しかし、21世紀になって、思い切った人事制度改革により成功する会社も登場しています。それは、社員の多様性に着目し、これを成長の原動力とした会社です。

代表的な事例が、2004年にV字回復した日産自動車です。当時のカルロス・ゴーン社長の成功はコストカッターだったことにあると思われていますが、そうではありません。外国人や女性・中途採用の社員など、多様な人材を活用していき、うまくマネジメントしたことがその理由です。

それまで、日本企業の管理職は、同質性を持った集団を引っ張っていくだけで良かったのですが、それはマネジメントと呼べるものではありません。多様な人材をうまくまとめ、活躍させることが本当のマネジメントです。

ゴーン社長の下で、かつての居心地のいい環境の中でのやりやすいマネジメントではなく、真の意味でのマネジメントが求められるようになり、日産自動車の管理職は困ったことでしょう。しかし、多様性をうまくマネジメントし、新たな力を発揮させていくことこそが、組織の強みにもなっていきました。

組織と人のモチベーションの評価が出発点

人事で課題を抱えている場合、問題の所在を明らかにするために、組織診断が行われます。

一般的な組織診断では、さまざまな戦略や制度、組織構造の検証などが行われます。そして、明らかになった問題を解決し、これを業績改善につなげていくことになります。

組織診断はコンサルティング会社によりそれぞれ専門性を持った視点で行われますが、我々の場合は、社員が何を感じているのか、その結果モチベーションがどうなっているのか、この点を明らかにすることを診断の出発点としています。

モチベーションがなぜ低いのかが分かれば、対策をとることができます。とはいえ、高度経済成長時代と異なり、将来に不安を抱えた時代なので、対策は単純ではありません。こうした時代で、どうすれば人は前向きになるのでしょうか。

多様性に着目した、希望の持てる人事制度に

多様性ということはヒントになります。人によっては、仕事そのものが楽しいということが、モチベーションにつながります。また、仕事がもたらす結果を通じてやりがいを感じる人もいるでしょう。報酬も金銭だけではありません。登用配置や長期休暇などもあります。

逆に、一面的な評価しかできない人事制度では、それぞれ役割の異なる社員に対応することは難しいですし、とりわけ強引に成果を求めてしまうような制度では、かえってお客様の支持を失うことにもつながります。

いずれにせよ、社員にとって、成果が評価や報酬に結びつく、そういった希望が持てるようにするにはどうすればいいかが、人事制度の出発点となります。

シンプルな質問で企業の風土を調査

我々は、「みのり風土調査」で組織診断を行っています。ネット上で行う、わずか20問の設問による調査ですが、これでも組織のモチベーションについての十分な評価ができます。

この診断の背景には、V.H. Vroom-L.W. Porter & E.E. Lawlerによる期待理論があります。これは、人間がどのようなプロセスを経て動機付けされるかという理論で、一言で言えば、個人が報酬に高い価値を認め、努力すればこの報酬が得られると思う期待が高いほど、人はより努力をするとする考え方で、個人によって価値観が異なることがポイントです。

この理論をもとに、当時のテキサス大学教授 Padmakumar Nair(現Thapar Universityビジネススクール学長)が開発したのが、我々が提供している組織診断になります。

我々の診断の特徴は、以下の3つの要素(期待理論のプロセス)で組織のモチベーションのレベルが評価できるということです。その3つの要素とは、

E/Expectancy:努力すれば成果を出せるという期待
I/Instrumentality:出した成果が報われるという期待
V/Valence:報酬自体の魅力

このEIVの3つがどのようなパターンになっているかで、どこに問題があるかがわかります。

一般的に、モチベーションが低い組織では、EIVのいずれかが特に低くなっていることが多い。わかりやすい例として、Vが特に低い会社の場合は、報酬に問題があることが分かります。そこで、社員にとって魅力ある報酬とは何なのかを検討し、報酬制度を見直すということになります。

実は、我々に相談をする会社の場合、組織診断をすると、Iが低いというケースが多いようです。会社としては、十分な報酬を出しているつもりになっているのに、モチベーションが低いので、その理由を知りたいということでしょう。

なぜ、Iが低いのかというと、多くの場合、自分の出した成果が報酬に結びついていると感じられないことがあげられます。そこには、経営者が考える人事戦略がうまくいっていないという問題があります。

経営は人事戦略を明確に

Iが低い、すなわち成果と報酬が結びついていない場合、人事戦略から見直していく必要があります。とりわけ、女性、中途採用者、若い社員、数字で評価できない管理部門などにしばしば不満が見られます。こうした多様な社員が納得し、モチベーションを上げることができるような人事戦略が必要になります。

具体的には、会社のビジョンやミッション、あるいは経営哲学や事業戦略、こうしたものに基づいて、人事戦略を明確にすることです。その上で、これを社員に公表し、人事評価などの方針を明確にします。とはいえ、制度はフレキシブルなものだと考え、社員に不満があれば再度見直していくことも想定し、あらためて人事戦略として落とし込んでいくことになります。また、価値観が多様化する中で、報酬を議論するときに、非金銭報酬の重要性が見直されています。どのような報酬にするのか、社員にどのように認知してもらうのかということにも、工夫が必要になってきます。

(終わり)

ケーススタディ - みのり風土調査 導入事例
国土防災技術株式会社
代表取締役社長 柳内克行 様
私たちの会社は、日本全国にある山地の地すべりや土石流などの災害を防ぐためのコンサルティング事業を展開しています。

当社は専門家集団であり、全国でコンサルタントが業績を残しています。しかし、会社の将来を長期的視点で考えたとき、会社の方針が共有されず、上司と部下の間でも十分なコミュニケーションができていないことに気付きました。そこで、あらためて、社員がどのような役割を担うのかを分析し、マネジメントしていくこと、またこれに対応した人事戦略を策定することにしました。

みのり風土調査をしてわかったことは、特定の地域を担当する社員にIが低いということでした。

そこで、出発点として、1人1人の社員の役割を見直し、これを適切にマネジメントしていく組織にしました。これまで、社員が自由に現場で仕事をしてきたことに対し、不満が出るのではないかと思いましたが、社員にとってはやるべきことが明確になり、報告に対する上司からのフィードバックも得られるようになったので、かえって満足しているようです。

人事制度や評価基準を明確にしたことで、新卒の学生の採用にあたっても、大学の先生からは「安心して学生を預けられる」という評価をいただくようになりました。

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