1967年2月3日生まれ、愛知県出身。
米国Washington D.C., The American University, Economics(BA)卒
NTT DoCoMo(東京都千代田区)入社、1996年NTT DoCoMo東海(名古屋市中区)広告宣伝・マーケティング担当を最後に退社、ベレネッツに入社。1997年に代表取締役就任。
「いい商品なのになぜか売れない」「優れた技術を持っているのに理解されない」「能動的な営業活動以外の販売手段がない」という悩みを持つ経営者は少なくないだろう。こうした課題を解決するために、経営コンサルタントや広告代理店に相談することも多い。しかし「なぜお客様は共感してくれないか」ということを見落としていないだろうか。
ブランディングとは、お客様が共感できる「勝てる脚本」の構築だ。競争優位性を持った強みや、ターゲットそれぞれに合わせた共感される価値の見える化を図り、あなたの会社の「光の当て方」を変える手法を言う。
一方、マーケティングとは、それらに共感したお客様が自らの意志で集まってくる仕組みを創ること。この仕組みによって、あなたの会社は今までの能動的な営業に加え、顧客が集まってくる手法を手に入れることができる。
平松氏は、どんな企業にも競合を凌駕できる「ネタ」があると言う。データを駆使し、行動科学的な思考を入れたステップに従っていけばブランド構築は進められる。
マーケティングとは何か。それは「売れる仕組み」をつくることです。それは、広告を使ったり、お客様を探して電話営業したり、飛び込み営業する「Push型営業」ではなく、自動的に売れる仕組み、お客様が集まってくる「Pull型営業」の仕組みをつくっていくことです。
一方、ブランディングとは何か。それは売れる仕組みを支える脚本を創っていくことです。当然、基盤となる脚本がしっかりしていなくては、売れる仕組みなどできるはずはありません。
こうしたブランディングとマーケティングを間断なく継続し、かつ、徹底して行うことが、納得できる実績を残す経営には必須なのです。
ところが、「いい商品/いいサービスなのになぜか売れない」「優れた技術を持っているのに理解してもらえない」「能動的な営業活動以外の販売手段がない」という悩みを抱えた経営者は少なくありません。
また、広告宣伝活動や展示会への出展などを行っていても、効果がないということも少なくありません。
何が問題なのでしょうか。よく見られるのは、企業が提供したい商品/サービスの「提供価値」と、お客様が求めている「体験の価値」にずれがあるというケースです(図1)。
例えば、電動ドリルを考えてみましょう。メーカー側は、あらゆるサイズのドリルの先端をたくさん付けた商品を作れば、オールマイティに使える電動ドリルとしての利便性が「提供価値」だと考えるでしょう。しかし、顧客の欲求は実は電動ドリルの甲高いカナ切り音がいやだ、というものだったりします。この「音を抑えて欲しい」という静音性が「体験価値」なのです。
いい商品なのに売れないという場合は、この例のように提供価値と体験価値にズレが生じています。
そこで、提供価値と体験価値を一致させて、お客様が商品/サービスに共感するようにする必要があります。こうした取り組みが、ブランド構築のスタート地点となります。
これは、商品・サービスばかりでなく、企業そのもののブランド構築でも手法はまったく同じです。
では、ブランディングやマーケティングはどのように行うのでしょうか。
全面的なブランディングを行う場合、3か月から半年かけて徹底した初期調査を行います。例えば、社内外のヒアリングです。社内での経営陣、社員ヒアリングはもちろんのこと、社外では、クライアントの取引先やその業界を得意とするマスコミ、関係する学識者など、100人以上にも及ぶヒアリングを行うこともあります。
一方、我々も背景となる業界やクライアント、競合他社などに関する生データも徹底して解析していきます。加えて、弊社ではターゲット層が、どのような質問や悩みを持ち、どのようにネット検索するのかというデータを洗い出す仕組みも持っています。
初期調査の後、いよいよ始まるのが、「提供価値と体験価値の見える化」です。この工程の結果、会社が思い描く提供価値とお客様が感じる体験価値を確定します。進行していくプロジェクトチームは、経営層を含む社内10名くらいのプロジェクトチームで進めていきます。10回程度のセッションを通じて、「脚本」が完成しますが、最終的に、自分たちの会社や商品/サービスがお客様にどのような価値を提供していくのか、きちんと納得でき、その後の戦術を実行できるところまで落とし込みます。ここまでくると、社員は1分で自社の商品・サービス・会社の差別化要素、強みを話すことができるようになります。
具体的には、細かくセグメント分けされたターゲット顧客が期待するベネフィット、競合他社の動向から見たベネフィット、さらに社内の熱意を向上させる暗黙知のベネフィットなどまで、幅広い内容に及びます。これを、私たちが「提供価値シート」(脚本)と呼ぶものに徹底的にまとめていき、文字として「見える化」することで、問題点やブランド構築の方向性などを考えられるようになり、市場への攻め方およびターゲット顧客層との接点の脚本が創られます。そして、ここがスタート地点になります。
脚本作りが終わったら、次はアクションプランの構築です。アクションプランとは、経営や事業に何らかの計数効果もしくはKPIをもたらす全社で取り組んで行く戦術プランの策定です。とくにアクションプランは、広告を使ったり、能動的な営業活動というPUSH型ではなく、潜在的顧客にベネフィットを体感させ、自動的にこちらに誘引するPULL型、つまりインバウンドマーケティングのみを策定します。そしてその先には、アクションプランの実行・検証・フィードバック、次のアクションというPDCAサイクルがあります(図2)。
戦術では、Web系の仕組みを使ったデジタル手法から、提案資料や対面時のトークスクリプトまで変更するようなアナログ手法もミックスされます。
売れるしくみをWebに落とし込むように、営業トークやプレゼンテーションの資料などにもしくみを落とし込みます。例えば、プレゼンテーションにあたって、1分でお客様が共感しないような資料ではダメなのです。この場合は、パワーポイントで資料を最初から作り直すことも行います。
弊社のアクションプランにおいて重要なことは、成果が計数で体感できることです。Webであれば単純なアクセス数よりも営業活動的数値の向上、資料請求数獲得、お問い合わせフォームからの離脱の改善、特定のキーワードでの濃い顧客のアクセス向上など、事業効果のあるもの以外行いません。細かく体感できるKPIを設定し、徹底的にPDCAサイクルをまわし、戦術を変更・修正しながら、次の展開に進んでいきます。その点、計数化できないマス広告などは、マーケティングの戦術としては効果がないといえるでしょう。
クライアントの中には、業績不振・事業再生のために猶予の時間が少ないことから、小さな規模でスタートさせたいというケースもあります。その場合は、上述のセッションを行う時間的余裕がありませんので、当社から仮説に基づいた提供価値と体験価値を示します。これに基づいて、スピーディーに事業成果に結びつくアクションプランを構築します。このような場合は、レベニューシェア(収益分配型)で行います。
すぐに事業成果に結びつけるために、弊社では資料請求・お問い合わせ・見積もり請求・来店予約獲得などを得意としたアフィリエーター(ネット上での成功報酬制紹介代行)のシステムを持っており、強いPULL網を構築することができます。
多くの企業が難しいと思っているのが、ひたすら新しい顧客を獲得しようとするからです。弊社顧客のケースではまず新しい顧客の獲得よりも、これまでの顧客に十分に浸透していなかった、いわゆる販売の機会損失をなくすことで、売り上げが上昇されることが多いです。
また、アクションプランの最初の段階では、どれだけターゲット顧客とのコンタクトポイント(接点)を数多く持つかが勝負ですので、複数のPULL型マーケティング施策に加えて、アフィリエーターの活用、さらには、社内に広報担当をつくり、担当と経済誌との接点をつくることや、弊社取引先の上場企業のトップや有名企業トップと面談する機会を設定することもあります。
売れるしくみづくりには、どの会社にもチャンスがあると思います。3年以上事業を続けている会社には、必ず提供価値があり、差別化要素が存在すると考えられます。ただ、その強みが暗黙知として共有されず、成果につながらなくなっているケースもあるでしょう。
こうした会社に、ブランディングで「勝つ脚本」を構築し、顧客が能動的に近寄ってくる「インバウンドマーケティング」を計数成果を見ながら実行・PDCAすることで必ず業績を向上させることができます。
また、ブランド構築を進めると、社員が自社の強みを見つけ、勝ち目があると思うようになり、社内モチベーションも向上します。実際に、ヒアリングを通じて社員の方に、商品の良さや会社の強みを語っていただくと、勝ち目も見えるようになってきて、モチベーションが上がります。逆に、アクションプラン構築のセッションではネガティブワードを禁止し、常に前向きな姿勢をとるようにもします。こうした社内の化学反応を起こすことで、会社が変わっていくことを体感できることが大切です。
(終わり)