アメリカのシリア空軍基地への空爆で北朝鮮情勢はさらに緊迫度を増している。いよいよ金正恩への斬首作戦が決行されるのか。
今回のシリア空爆は世界のトランプ政権に対する見方を大きく変えたと考えられる。トランプ大統領は選挙期間中から「アメリカ・ファースト」を掲げ、アメリカに直接の利害関係がない紛争には関与を弱めていくと考えられていた。
トランプ大統領は「強いアメリカ」を標榜していたが、軍事的なアクションをどこまで行うかについては未知数であった。
しかし、今回、シリアの化学兵器使用が判明してからわずか2日で報復措置を実施。しかも、国連決議も経ず、またアメリカの同盟諸国との連携もなく、アメリカ単独での軍事攻撃だった。
これは、朝鮮半島情勢にどのような影響を与えるだろうか。
北朝鮮は近々、6回目の核実験に踏み切ると見られる。核兵器の小型化に一層拍車がかかるだろう。また、ICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の開発にも余念がない。これらによって、北朝鮮はワシントンやニューヨーク、ロサンゼルスなどアメリカ本土へ直接の核攻撃が可能になる。既にアメリカ政府は北朝鮮は「レッドラインを超えた」と判断した様だ。
さらには、アメリカの安全保障の最高意思決定機関であるNSC(国家安全保障会議)のメンバー構成が変わったことも大きな影響があると考えられる。
既に、マイケル・フリン氏が大統領補佐官の辞任に伴いNSCを去っているが、加えて、先日、影の大統領とも言われているスティーブ・バノン氏もNSCのメンバーから外れた。
6人いるNSCのメンバーの2人が入れ替わった形だが、これまでバノン氏、フリン氏の両氏は、NSCの中では、アメリカ孤立主義を主張するタカ派として存在していた。この2名がNSCを去り、残りのメンバーは、全て伝統的な共和党政策である「国際協調主義」を支持している。
そうするとNSCには、北朝鮮への軍事オプションにブレーキをかける役割が不在になった状態だ。もはやアメリカが軍事オプションを躊躇する理由はなくなった。「行動するアメリカ」へ大きな政策転換が行われる可能性がある。
では、これによって、北朝鮮の金正恩は、核開発やミサイル開発を断念するかと言えばそうではない。
むしろ、アメリアの軍事攻撃が現実化するなか、これまでの核開発やミサイル開発をさらに加速させて、一日も早く、アメリカ本土を攻撃できる日を実現させたいと考えているというのが、北朝鮮情勢の専門家達の大方の見方だ。
核攻撃能力を持つことが唯一、北朝鮮が生き残れる道だと、金正恩は考えているのだという。
一方で北朝鮮には、これまで中国が後ろ盾となり、その存続を支えてきた。しかし、今回の米中首脳会談によって、アメリカと中国の間で北朝鮮に対する裏取引があった可能性があると見る中国の専門家がいる。
習近平主席は、この秋に開催する共産党党大会を何とか無事に終わらせ、自身の権力の座を守りたいという考えでいる。
今回の首脳会談で、トランプ大統領が中国を訪問することが決まった。まだ時期は未定だが、トランプ大統領の中国訪問までは、アメリカとの関係をこじらせると、それが党大会の開催に影響を与えてしまいかねない。
このようなことから、アメリカが北朝鮮に対して斬首作戦の様な限定的な軍事作戦を行った場合には、それを黙認するようなことが、暗黙の了解として確認されたのではと推察される。
このようなことから、アメリカの北朝鮮への軍事攻撃の可能性は日増しに高まってきていると言える。Xデーはいつになるのか。