ブランド新7つ道具とは(続)
企業ブランドと競争優位性(第8回)
丹生 光
組織進化のために、ブランドアイデンティティーの具体化と実践が注目されている。企業組織の本質を変革し競争優位性を高めるためには、ブランド「を」マネジメントすることからもう一歩進めたブランド「で」全社をマネジメントする「トータルインナーブランディング」が必要だ。
次への飛躍を目指す組織進化においてコーポレートブランディングは、方向性を示すだけでなく、大きな推進力ともなる。それを具体的な形で展開し、成果に結びつけるためのブランド7つ道具、新7つ道具の概要を前回ご紹介した。
それらはブランディングによる組織進化の15ステップ(本誌Vol.6参照)を進めるための具体的な方法論である。それは、ブランド構築からその認知・理解までブランド「を」マネジメントする「ブランド7つ道具」とブランド「で」組織進化をさせるためにブランドに組織が共感・行動し、成果をあげるまでの「ブランド新7つ道具」の2つからなる。
前者は基盤編であり、後者は発展編である。今回は、ブランド基盤をすでに築いた企業が、組織進化をするための新7つ道具についてもう解説を加えたい。
ブランド新7つ道具とは、N【1】ブランド課題調査・設定(ブランド課題調査、課題設定、解決施策など)、N【2】組織ミッション・ビジョン創り(ビジョンストーリー創りによる社内ブランド展開など)、N【3】中期経営計画への組み込み(中期経営計画、事業計画、PDCAへの組込みなど)、N【4】コンタクトポイントマネジメント(トーン&マナー基準と適用、評価・研修、接点支援システムなど)、N【5】顧客関係性マネジメント(顧客状況理解・提案の仕組み、顧客情報システムなど)、N【6】商品・サービスマネジメント(企画開発基準、評価・フィードバックの仕組みなど)、N【7】IRブランディング(投資家視点の情報公開、投資価値ある中期経営計画など)の7つからなる。
まず、ありたい姿としてのブランドアイデンティティーを描き、現状とのギャップをブランド課題として設定する。その上で、各企業組織の現場が課題達成のために何をしなければならないかを明確にするための組織ミッションの設定と組織ビジョン創りを行う。特に組織ビジョンはブランドアイデンティティーがキーワードと短い文章で組み立てられているのに対して、ストーリーでビジョン創りを行うことが効果的だ。その方が具体的で、リアリティーがあり、より本音に近いからである。その結果、社員の実現意欲が湧き、結果として実現する確率が高まる。
そこまで描ければ、あとは中期経営計画に盛り込み、そこからステークホルダーへのコンタクトポイントの変革につなげる。具体的には、顧客関係性をより深いものにする顧客関係性マネジメント、新しい商品・サービスにより感動を与える商品・サービスマネジメント、さらに株主にはロイヤリティを高めていくためのIRブランディングなどの各施策につなげていくことができる。(つづく)