共創スクエア

Organic Growth Consulting

価値の創造・提供・伝達

専門家に聞く「マーケティングとは何か」

綿貫 有維子

共創スクエア

ビジネスシーンでよく使われる言葉、マーケティング。社内にマーケティング部という部署を置いている会社も少なくないでしょう。

しかし、社内でマーケティングとは具体的に何をすることなのかが明確に定まっている企業は少ないと思います。会議においてマーケティングに対しての認識が担当者毎に異なっているというケースもあるかもしれません。

そこで今回は、日々当たり前のように使っている「マーケティング」ついて、その本質を専門家の方々に聞いてみました。今回は、オーガニックグロウス コンサルティング 代表の綿貫 有維子さんからの回答をご紹介します。

【ビズテリア経営企画 編集部】

マーケティングの定義 コトラーから

25年以上外資系消費財のマーケティングにどっぷりつかって来た私は、恐らく日本の企業のビジネスマンとは違った認識を持っていると思います。

マーケティングの定義と言えば、「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」という本の最初の方をお読みになれば、世界で通用するさまざまな角度からのマーケティングの定義を知ることができます。

30年前から「コトラーのマーケティング・マネジメント」はマーケティングのバイブルでした。最初から最後まで読む本というより、困った時、アイデアがほしい時に目次から探して拾い読みする、私にとってマーケティングの辞書もしくは教科書のような存在です。あともう1冊マーケティング・リサーチに関する本があれば、それ以上は何もいりません。

今は「コトラーの」が「コトラー&ケラーの」になり、恐らく最新バージョンは第13版か14版でしょう。私は第12版を日本語で持っています。英語は第13版を持っています。日本語と英語があれば、世の中で通用するマーケティング用語もこれ1冊ですべて網羅できます。少々お高いですが、興味のある方はアマゾンで検索して最新版を購入ください。持っていて決して損のない本です。

価値の創造・提供・伝達

私がこの本の中で気に入っているのは「マーケティングとは価値の創造・提供・伝達」といった部分です。消費財出身の私にとってマーケティングとは消費者のインサイトから始まります。まだ満たされていない重要なニーズはないか?消費者が思いもしない新しいニーズはないか?それに応える新しいベネフィットを提供できないか?そこから新しいコンセプトのアイデア、つまり新しい価値の卵が生まれます。

コンセプトのアイデアは更に消費者のアセスメントを経て選定され、既存の商品やサービスのリポジショニングとなったり、新製品・新サービス開発へとつながります。コンセプトだけでは製品にもサービスにもならないことは言うまでもないことです。そこには新しいベネフィットを本当に実現できる製品やサービスのパフォーマンスも必要となります。

例えば日本の少子高齢化は誰にでも認識できたトレンドでしたが、マクドナルドはそのインサイトに基づき、子供連れのファミリーが集う所から大人が集う所にリポジショニングを図りました。そのため用意された商品は100円コーヒーのみでしたが、ブランドアイデンティティの変更には大きな投資が必要だったでしょう。大人が集うにふさわしいインテリア、エクステリア、マーチャンダイザー、ユニフォーム、などを提供するためにお金をかけ過ぎたのではないかと今日では言われています。また、それを伝達するためにテレビコマーシャルも大人タレントを起用して大キャンペーンが展開されました。

大人が集う場所の提供は大きなトレンドとしては決して間違っていないコンセプトですが、投資のバランスの悪いリポジショニングになってしまったのでしょう。都心にある店舗にいろいろなところでバラまかれた100円コーヒーのタダ券で普段はマックを利用しない大人にコーヒー1杯で居座られただけで終わったのではないでしょうか?私も出張の時、国内線の機内でタダ券をゲットして普段は利用しないマックをこの時だけ利用した一人です。

短期的に言えば失敗ですが、長期的には都心の店舗はサラリーマンの朝食や昼食に普通に利用されるようになりました。今となってはお金を節約したいサラリーマンがマックの低価格コンセプトに引かれたのか、大人キャンペーンでマックに行きやすくなったのか、単独ではその成果は測れません。が、マックとそのユーザーが新しい価値を創造・提供・伝達したのは事実です。

4Pから4Cへ

昔はマーケティングは4P(Product/Price/Place/Promotion)だなどと言われていましたが、そんな古い話はもう通用しません。マックの例でも明らかですが、価値は顧客・消費者・ユーザーなどと呼ばれる人たちと一緒に創造・提供・伝達していく時代です。むしろ、主導権は顧客サイドにあります。自分たちが何でもすると思っている企業はうまく行かず、自分たちはお客様と共にあるという企業が生き残る時代になっています。

ちなみに「マーケティングマネジメント」には4Pに代わる新しい用語として4Cというのが出てきます。Customer Solution/Customer Cost/Convenience/Communicationのことですが、無理やり4Pに対応するようにつくられただけのことで、私はあまり好きではありません。が、4Pの時代とは違うんだということはご理解いただけると思います。

今後とも私はFMCG(Fast Moving Consumer Goods)と呼ばれる分野で消費者インサイトに基づき新しい価値を創造・提供・伝達していきたいと思っています。この分野はグローバリゼーションや低価格競争で疲弊しており、今は元気がないですが人々の暮らしに欠かせない分野でもあります。もうこの程度でよいということは決してないはずです。もっとよくなる可能性やイノベーションの可能性は無限に広がっていると思います。

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