プロジェクト推進の前に、経営者は意識変革を
MaaSが実現する、 業務改革マネジメントの成功(第1回)
代表取締役社長 川上 暁生
業務改革の成否は戦略ではなく戦術の問題
経営者の役割の一つは、経営戦略を立てるにあたって、何が課題であるかということを見つけることです。そして次に、その課題をどうやって改善していくのか、具体的な取り組みに落とし込んでいくことです。同時に、すべての課題を一度に解決することはできませんから、優先順位をつけていくことも必要になります。これは、経営戦略を立てると同時に、経営の戦術を決めていくということです。問題は、戦略は立てたのに、戦術に落とし込めないことがしばしばあるということです。すなわち、具体的な方策や優先順位をつけることができないといったことです。
なぜ、戦術に落とし込めないのか。そこには、経営者の2つの過信があるからです。
一つは、サービスプロバイダーなどの外部業者への過信です。経営者の多くはしばしば、「専門の事業者なので、課題を解決してくれるだろう」という先入観を持ちます。しかし、優れた業者であっても、クライアントに対して説明できることは原理的なことだけです。
もう一つは社員への過信です。優秀な社員を業務改革の担当者に指名すれば、あとはまかせればいいと考えてしまいます。しかし、担当者として、具体的な課題や解決の優先度、予算などの情報をどこまで的確に伝えることができるのかといったことは未知数です。
優れた業者と優秀な社員がいれば、課題は解決する、経営者はそのように期待します。しかし2つの過信は、業務改革の現場とプロジェクトの間に大きなギャップをもたらし、最終的には期待にそぐわない結果をもたらします。
すばやいリカバリーでプロジェクトを導け
では、経営者はどのようにすればいいのでしょうか。
第一に、現場の業務改革担当者にまかせっきりにしないことです。プロジェクトが進むにしたがって、最初に期待したこととのギャップが出てきますが、これをすばやくリカバリーし、プロジェクトの方向を常に修正していくことが必要です。また、進行中のプロジェクトの中にいると客観的に見ることは難しいので、客観的に見ることができるだけの距離をとっておくことも必要です。
第二に、業者との間で本音でのコミュニケーションができるようにするということです。社内と社外を融合させ、優先すべき課題解決や予算規模などは業者に、一方業者ができることは何かを社内の担当者にしっかりと伝えていけば、ギャップは生じにくくなります。
第三に、業者のゴールはシステムの導入ですが、プロジェクトのゴールは導入後の運用、フィードバック、改善まで視野に入れておくということです。業者に対しても、システム導入を最初から成功させるのではなく、改善しながら成功に導くということを理解してもらうことになります。
こうしたことを、経営者が担うことはたやすくありません。そこで、第三者となるプロジェクトマネジャーの設置が効果を発揮します。とはいえ、業者のサービスに精通する人材を社内で探すのは難しいでしょう。この場合、マネジメントを信頼できる第三者に委託することで解決できます。なお、当社ではこうしたマネジメントについて、必要に応じたサービスを“MaaS(Management as a Service)”として提供しています。
現場を変える業務改革の戦術を
業務改革を戦略から戦術に落としていくケースとして、セキュリティ構築を考えてみます。
企業などでは、個人情報をはじめとするさまざまな情報が外部に漏えいしないようにすることが求められています。しかし、メールやUSBメモリー、パソコンの持ち出しなど、漏えいのリスクは小さくありません。
業者を通じてセキュリティの問題を解決しようとする場合、しばしば、業者は高いスペックの対策を提案します。予算が許せば、徹底した対策をとることが望ましいからです。しかし現実には、予算の中でどのような対策を優先して行なうのか、考える必要があります。また、必須となる対策の見極めや代替案も必要となります。
例えば、システムにアクセス制限を導入しなくても、アクセスに関する規定をつくる一方、ログを記録するということを社員に周知させるだけでも、効果的な情報漏えい対策となります。プロジェクトを客観的に見ることが、こうした現実解を導き出すことにつながっていくのです。(終わり)