共創スクエア

IPエレクトロニクス株式会社

R&Dの投資効率改善で、新事業開発の効率化を

オープン・イノベーションがもたらす、大競争時代のブレークスルー

大槻 悦理

共創スクエア
悪化するR&Dの投資効率を改善するためには
現代は、多くの企業にとって、持続的・安定的な成長は困難な時代となっています。グローバル化が進み、競争が激しくなる一方、市場は成熟し、限られたパイを奪い合う状況になっています。新製品が次々と出される一方、価格破壊も進みます。
私たちが主としてお手伝いしている製造業においても、80年代までは右肩上がりでしたし、価格が半分になるまで10年程度かかりました。ですが90年代から2000年代には、価格が半分になるには2年から長くて5年となり、製品サイクルが短くなっています。今後は1年で価格が半分になるようなことも覚悟しなくてはならないでしょう。したがって、新製品を開発するための投資の回収期間もまた、どんどん短いものとなっていきます。

こういった状況にあって、今までのようにR&Dに対して巨額な投資をしていくことは難しいでしょう。事実、大手エレクトロニクス各社のR&D効率※は、バブル崩壊以降下がり続けており、多くの企業で40%以下です(2005年のデータ)。しかしなお、企業が毎年5~6%の成長を求められるのであれば、相応の新規事業創出が必要になります。では、このジレンマをどのように解消すればいいのでしょうか。
私たちは、これまでのイノベーションのモデルを変革すべきだと考えています。
※R&D効率=(5年間の累積営業利益)÷(その前の5年間の累積研究開発費)×100
オープン・イノベーションがR&Dを変革する
オープン・イノベーションの導入で成功した事例として、アメリカの日用品メーカーP&G(プロクター&ギャンブル)という企業があります。2000年当時、危機に瀕していた同社に、新たにアラン・ラフリー氏がCEOに就任し、事業を活性化させました。このとき、R&Dについても、オープン・イノベーションを導入します。R&Dではなく、C&D(Connect & Development)とよび、イノベーションの半分を外部調達するという目標を掲げ、7500人いた研究者の能力の有効活用を推し進めました。こうした改革を進めた結果、R&D効率は60%アップし、株価は2倍となっています。
代表的な事例の一つに、「プリングルズ」というポテトチップスに関するものがあります。同社では、このポテトチップの1枚ごとに絵を印刷した商品を企画しました。このとき、絵を描く技術を自社で開発するのではなく、技術仕様書を通じて公募したのです。その結果、イタリアにある大学教授の経営するパン屋がこうした技術を持っていることがわかりました。この技術を自社に合うように改良することで、「プリングルズ」を2ケタ成長に乗せることができました。
コアの技術を守り、技術全体の空洞化は恐れないこと
オープン・イノベーションを進めていく場合、よく言われることの1つが、「技術が空洞化するのではないか」ということです。しかし、技術全体が空洞化していく流れは止めることはできないでしょう。むしろ、自分たちのコアは何か、そこを見極めておくことが必要になります。
中国と競争することを考えて見ましょう。人件費は日本の5分の1ですが、巨大な人口を持つこともあって、優秀なエンジニアもたくさんいます。この中国の豊富な人材に対して、知的労働集約の海外流出・空洞化は止められませんし、また国内での技術開発にこだわっていれば、グローバルな競争には勝てません。
では、まったく空洞化してしまうのでしょうか。そんなことはありません。むしろ、オープン・イノベーションを推進する人材、知財や技術者をインテグレートしていくコーディネーターのような人材は、今後ますます必要になっていきます。

社内で必要な技術が開発されるのではなく、どのような技術が必要か見極め、それを探し、ライセンス交渉や知財の取り込みを行なっていくためには、個人ではなくむしろ組織的にシステマティックに行動していくべきでしょう。そうなると、R&D部門だけではなく、マーケティング、営業、その他の関連する事業部がプロセスに参加していくことになりますし、まさに組織横断的な取り組みを通じて、イノベーションを具体化していくということになります。
2000年代の日本の製造業は、国外に安い労働力を求め、競争に勝とうとしてきました。しかしそれはイノベーションではありませんし、結果として競争に打ち勝つことはできないでしょう。むしろ、危機感を持つ経営者であれば、基本的なフレームワークを変化させることを、トップダウンで実行していく必要があります。P&Gがまさに、そうした事例でした。
新規事業開発からの着手
現実には、多くの企業において、フレームワークを変化させていくことは、勇気がいることです。また、社内には社外のアイデアを見下す空気が強く残っている組織も多いことでしょう。これは、私たちが得意とするエレクトロニクスの分野でも同様で、結果として日本の半導体産業はあまり良い成績を上げてきませんでした。
そこで私たちはまず、新規事業の創出を支援するという視点から、オープン・イノベーションの提案を行なっています。
例えば、新規事業の創出にあたって、お客様はさまざまな課題を抱えています。どのような市場のニーズが見込まれるのか、どのような人材、どのような技術が求められるのかなど、課題は多岐にわたっています。また、競争力の源泉は独自性ですが、そのコアはどこにあるのか、社外に求めるのはどのような技術・プロセスなのか、といった点を明確にしておく必要もあります。
私たちは、こうしたお客様のニーズに応えるために、さまざまなサービスを提供しています。
新たな成長へブレークスルーを
IPとはIntellectual Propertyいわゆる知的財産権を意味しますが、社名のIPには他にもいくつか意味を込めています。それはInnovation Platformであり、これを支えるIntegrated Professionalsです。
私たちの強みの1つは、新規事業開発支援と知的財産権のライセシングが融合したビジネスモデルだということです。ライセンスを仲介するだけではなく、複数の企業のライセンスをパッケージにしてご提供するということも行ないます。このようなサービスを通じて、クライアントからは一元的な契約を結び、ロイヤリティを適切に配分させていただいています。
また、独自の高度な専門性を有するグローバル人材のデータベースとネットワークがあり、お客様が必要とする、あるいは課題を解決してくれる人材や技術を探すことができます。

また、最先端の知財分析ツールを用いたソリューションや最新技術情報のデータベースもご提供いたしております。すなわち、人とシーズの両方を見据えた、イノベーション・プラットフォームとして、お客様を支援していく体制を整えているということです。
もちろん、私たち自身もまた、イノベーターでありたいと考えており、特に成長が見込まれる分野では、戦略的な展開を行なっております。
今、日本のエレクトロニクス産業にはブレークスルーが必要です。例えばグリーンテクノロジーに代表される新たな成長分野に向けて大きく舵を切ることが必要でしょう。私たちは、こうしたお客様を支援し、産業の発展に貢献していきます。(終わり)
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