本当の意味での「グローバル人材」とは?
最近はよく「自社にグローバル人材が欲しい」と言われる経営者がいます。しかし、これだけ経済がグローバル化した世の中になると、企業全体のグローバル指数を上げる努力をしない限り、本当の意味でのグローバル人材は望めません。
高い山というのは裾野が広い。つまり山を高くしたいと思ったら、裾野も広くしなければなりません。特定の「キャリア組」からグローバル人材を探し出すのではなく、企業文化のグローバル化を進めることでその裾野を拡大していくことが重要になります。
企業であれば社員全員がプロ(リーダー)となり、それをリードする人が本当のリーダーになるという発想です。
当社ではそうした母数を構成するグローバル人材に必要とされる教養を、「プロフェッショナビリティ」と呼んでいます。
その定義とは「すべての産業人が自明のものとして有しているべき教養」のことです。これをどう分節化し、実装していくかを、以下に独自に開発した教育フレーム(下図)を用いて説明していきます。
知の身体化へのベクトル
会社資源というと、一昔前では「人・物・金」でした。近年ではそれに「情報」が入り、また昨今ではさらに「技術」も加わりました。
プロフェッショナビリティではこの「情報から人」までの4要素のみを問題にしています。
「情報」とは定性情報のことであり、「金」はその逆の定量情報のことです。「物」というのは物事のことですが、ここでは物事が情報化される以前の生事象のことを指します。「人」と言うのは会社資源としての人です。
この横軸を「扱う分野」とすれば、縦軸は「扱う次元」です。次元には「分析」「問題解決」「構想」があり、定性情報であれば、それを分析し問題解決に役立てるだけではなく、構想まで行なうわけです。
それを単なる知識としてだけではなく、自明のこととして使えるように身体化(熟達)されている人を、当社では「プロフェッショナビリティがある人」という言い方をします。
リーダーへの6のステップ
次に教育フレームの中身についてですが、セミナーなどではよくミッシー(MECE)という思考の全面展開のキーワードが出てきます。このⅠの段階ではそうしたミッシー的な思考を徹底的に身に付けます。それに対してⅡではゲーム理論や確率、統計などの数字から、その意味の読解力を身に付けます。
Ⅲの領域では、問題の定義である「TOBE(あるべき姿)?ASIS(現状)」の理解が求められます。原因分析をもとにした、解決に至るまでのシナリオ作りをここでは徹底してやるわけです。
その一方でASIS(現状)は理解しているものの、TOBE(あるべき姿)が存在しないというケースを想定し、それを「構想」しようというのがこのⅣの領域です。なぜ、Ⅳがこの流れの位置にあるのかについては、Ⅰ?Ⅲとの関係での布置をする。つまり単体としてではなく、体系的な見方で捉えることが重要だと思われるからです。
Ⅴでの生事象における分析→問題解決→構想による戦略定着を行なった後は、Ⅵではリソースとしての人への理解を深め、その動員力を身に付けます。最終的には動員をかけずとも、人の心を鷲づかみすることで動かせるようになる。これが本当の意味でのリーダーとしての到達地点です。
経営戦略の再定義と実装
こうしたプロフェッショナビリティの考え方も含めて、当社では「経営戦略の再定義の必要性」を提案しています。
そもそも企業経営の戦略とは何でしょうか?当社ではそれを「企業活動の一貫性」と理解しています。
経営トップから末端の社員までが同じ方向を向いて一貫して行動している。そしてそれは最初にテーマがあるのではなく、企業行動が一貫した形になったときに初めて顕在化していくものです。つまり大切なのは戦略ペーパーではなく、戦略の実装なのです。
そうした戦略の実装の試みとしては、直近の例では横浜ゴムのある事業部の例があります。同事業部では当社のコンサルタントが実際にその現場に入り、社内の日常のオペレーションを見ながら問題点を抽出するという手法により、戦略実装としての成果を上げつつあります。
これは「オンサイトコンサル」と呼ばれる手法で、例えば残業をする社員がいれば、われわれも残業時間に残ります。週末出勤する社員がいれば、その様子を見るためにわれわれも週末出勤をします。夜討ち朝駆けのような業務ですが、前述のように企業行動の一貫性こそが企業戦略ですから、企業なり、事業部なりの全活動を見なければ問題点は抽出できません。
企業行動に一貫性を持たせるということは、全社員にそれが実装されていることが前提になります。こうした経営戦略の再定義とそれの社員への実装こそが、当社事業におけるキーワードの一つであると思っています。(終わり)