注目されつつあるインナー・ブランディングとは
企業ブランドと競争優位性(第2回)
丹生 光
数年前から競争優位性を高めるためにブランドマネジメントを行う企業が一般的になった。しかし、外向きのイメージを変えるアウターブランディングだけでは企業の本質までは変わることことに気づき始め、インナーブランディングに注目する企業がいま急速に増えている。
いくらブランド「を」マネジメントしても企業の本質は変わらない。企業の本質を変革していくには、もう一歩進めてブランド「で」マネジメントする段階まで進める必要がある。それはブランドアイデンティティーの実践を通じて事業戦略や業務プロセスを変える、あるいは社内の組織変革を行うことなどを意味している。そのためにブランド「で」全ての企業活動を目指す姿の実現に向けマネジメントすることなのである。
このようにいまインナーブランディングが注目されつつあるが、その定義は確立していない。従来からあるブランドアイデンティティーの内容を社員に理解させ、求心力を高める研修、冊子配布、社内広報などは、いわば狭義のインナーブランディングである。ここでは、当然ながら企業活動全体をマネジメントする広義のインナーブランディングを論じている。これを区別するために後者を「トータルインナーブランディング」と呼ぶ場合もある。
トータルインナーブランディングの概念は(図1)に掲げたとおりである。ブランドを実現するための全ての企業活動をマネジメントするということは、いうほど簡単ではない。この全体像を俯瞰して、それぞれの活動が何を目指しているのかを社内で共有化していないとブランディング活動が空中分解してしまうことになる。
具体的なそれぞれの実施内容を図2にまとめた。これらを全体統合しつつ、企業変革を進めていくことが企業価値の高まる本当の意味のブランディングである。(つづく)