多くの営業マンにとって、プレゼンテーションにおけるパワーポイントの活用は必須となっている感がある。だが、その一方で、営業マンが顧客ときちんとコミュニケーションできているのかどうか、疑問を感じることもあるのではないだろうか。また、他方、パワーポイントによる資料作成が重荷となっている営業マンもいることだろう。ブルージラフ株式会社代表取締役の小林孝至氏は、資料作成は担当の営業マンから切り離して営業支援部門や上司がコントロールすることを提案する。
【ビズテリア経営企画 編集部】
パワーポイントに使われる営業マン
プレゼンテーションのためのソフトウェアとして、パワーポイントはさまざまな場面で使われているのが現状です。営業マンがお客様に商品やサービスを説明するにあたって、パワーポイントによる資料を作成し、提供するのは、できて当然ということ感があるかと思います。
ですが、そこにはたくさんの問題が潜んでいます。
ひょっとしたら、パワーポイントありきの営業活動になってしまっていないでしょうか。営業マンが、より見栄えのする資料を長時間かけて作成しますが、その結果としてプレゼンテーションがお客様の心に響かない、といったこともあるかもしれません。また、そもそも、どの営業マンもパワーポイントで上手に資料を作成できる技術を持っているわけではなく、苦痛に感じている方もいるでしょう。
その他にも、たくさんの問題があると考えています。
問題は、本来はツールであるべきパワーポイントによって、かえって営業マンの仕事が振り回されてしまっているということです。これでは、営業マンは本来の営業活動が十分にできないのではないでしょうか。
パワーポイントの資料作成にひそむ、3つの問題
パワーポイントを使いこなしている営業マンであっても、少なくとも2つの問題を抱えています。
第一の問題は、プレゼンテーションのシナリオの問題です。
営業マンが作成した資料は、しばしばボリュームが大きくなりがちです。お客様に提供しようとしている商品やサービスについて、あれもこれも伝えようとするからです。さらに、営業活動を展開していく上で、事例や新機能などを追加していけば、資料はどんどんふくらんでいきます。
その結果、お客様は営業マンから長時間にわたって、あれもこれも聞かされることになります。しかし、聞かされることの多くは、お客様にとって興味がなく、本当に求めている機能の説明だけを聴きたいのかもしれません。
お客様に商品・サービスの長所を最大限伝えようという営業マンの心理が、コンパクトで要領を得た資料作成の障害になっているということです。
第二の問題は、クリエイティブ面の問題です。
営業マンはそもそも、プレゼンテーション資料の作成が専門ではありませんから、パワーポイントの知識や活用の能力がなくても、それは当然のことです。もちろん、十分な知識がある営業マンであっても、デザインの専門家ではないでしょう。例えば、イラストや写真の挿入ができたとしても、それを効果的に配置することは、たやすいことではありません。まして、動画などの挿入は、効果的にお客様の関心を高めることができなければ、かえって退屈に感じさせてしまうため、扱いは難しいのです。
パワーポイントの使い方を熟知した営業マンであっても、デザインの専門家ではないということなのです。
そのように考えてみると、そもそも営業マンに資料作成までさせるべきなのかどうか、という結論に達することでしょう。パワーポイントを作成することが目標になり肝心のお客様とのコミュニケーションがおろそかになってはいないでしょうか。むしろ、営業マンはコミュニケーションに集中すべきであって、プレゼンテーション資料の作成などは、営業を支援する部門やマーケティング部門が担当すべきだと考えています。
プレゼンテーション資料の管理を通じて、効率的な営業活動を
この他にも、営業マンが各自でプレゼンテーション資料を作成することには、さまざまな問題があります。複数の営業マンが同じような資料を作成してしまうことや、それぞれの営業マンが作成した資料ごとに内容にぶれが生じること、さらに間違った内容や古くなった内容があっても、管理しきれないことなどです。
こうした問題を解決するためには、営業支援部門やマーケティング部門が資料を管理し、あるいは同じ営業部門の中でも資料管理の担当を置くことやマネジャーなどによる管理といった対策が効果的です。
例えば、マーケティング部門がプレゼテーション資料を担当するとします。このとき、マーケティング部門は、製品やサービスの特長として、お客様にもっとも伝えたい内容を、もっとも適したデザインによって、資料を作成することになります。また、会社のブランドイメージにそった内容にすることも必要です。すなわち、パンフレットなどの営業ツールと同様に、パワーポイントによる資料も作成するということなのです。
一方営業マンは、資料作成から解放され、マーケティング部門が作成したプレゼンテーションの資料を活用していくことになります。その結果、営業活動においてはお客様とのコミュニケーションに集中しやすくなるでしょう。ポイントをしぼったコンパクトなプレゼンテーションは、聞いているお客様にとって負担の小さいものですし、その分だけ、お客様のニーズを聞く時間を増やすことにもつながります。
また、製品の機能やサービスの内容が変更されるたびに、最新の説明資料がどれなのか、マーケティング部門が管理することで、お客様に対する間違った、あるいは古い説明を行なうことを避けることができます。同時に、会社のブランドイメージやメッセージなどもぶれることなく、伝えていくことができます。
このように、営業マンによるお客様との直接のコミュニケーションと、そこで使われる資料の作成・管理を分離することによって、効率的・効果的な営業活動につながっていきます。
パワーポイントの資料作成の外部への委託も有効な手段
プレゼンテーション資料の作成を営業マンから別の部門に移すことで、営業活動を効果的・効率的なものにすることができますが、それでもなお、マーケティング部門などが資料作成のデザイン面やプレゼンテーションのシナリオ作成などで高い能力を持っているとは限りらないという問題があります。そこで、こうした資料作成にあたって、外部の専門会社を使うということも、一つの有効な手段です。
私たちブルージラフでは、FLASHやアニメーション、CG、映像などを利用したコンテンツの制作の豊富な経験があります。また、こうした動画などを、プレゼンテーションの中で効果的に使っていくノウハウも持っています。
こうした経験をふまえ、クライアントのプレゼンテーションツールの作成についても数多く手がけてきました。
例えば、製品やサービスの特色を的確にお客様に伝えるプレゼンテーションのシナリオ作成から、効果的なデザイン、とりわけアニメーションの作成などをお手伝いすることができます。
外部の専門会社が制作した場合、最初に質の高い資料が作成されても、今度は容易に変更できないのではないか、ということをお考えになるかもしれません。外部への委託は、確かに、医療器具や薬剤に代表されるような、開発期間も寿命も長い商品のプレゼンテーション資料には適していますが、頻繁に内容の変更が必要な商品やサービスの場合、変更のたびに外部に委託するということは納期的な問題やコスト的な問題を懸念されるのではないでしょうか。ですが、こうした場合は、資料を全面的に変更せずにマーケティング部門などで必要な部分を改訂出来る仕組みを提供することが可能です。
最初に、質の高いプレゼンテーション資料を作成してしまい、これをモデルとして、マーケティング部門が改訂とバージョンの管理を行なっていくことをお勧めいたします。(終わり)