リーダー(leader)とは、「リード(lead)する人」のことです。「lead」には、「導く」「案内する」「率いる」などの意味があります。すると「リーダー」には「導かれる人」「率いられる人」の存在が必要不可欠となります。「フォロワー(follower)」という「ついてくる人」がいてこそリーダーはリーダーとして成立するのです。このような「リーダー&フォロワー」という構図から発想されたリーダーシップには「リーダーは皆の先頭に立ってフォロワーを導く」つまり「率先垂範」のイメージが伴います。
ここで少し見方を変えてみます。リーダーはフォロワーを導くわけですが、この時、リーダーはフォロワーに対して何らかの「力」を作用させています。社会心理学ではこの「力」に着眼し、リーダーシップを「人に影響を与えるプロセス」と定義します。ビジョンや目標を掲げ、皆を率いていくには、リーダーがフォロワーに「影響」を与えて行動を起こさせなくてはいけません。でなければ目標を達成することはできないのです。ですから「リーダーシップとは『影響力』である」と考えることもできるのです。
経営組織においてリーダーたちは、部下というフォロワーに対して影響を与え、そのことに腐心しながらも、なかなか思い通りにいかず、時には頭を抱えることになります。リーダーシップとはフォロワーという「他者」に対して発揮していくものですが、その前段階として「自分」という存在に影響を与える「セルフ・リーダーシップ」があることを忘れてはなりません。自らを鼓舞し、励まし、ねぎらう。そうした「自己への影響力」なくして「リーダーシップ」は成立しません。
「リーダーは何に対して影響を与えるのか」と考えた時に、以下の3段階があります。
1)「自己」(SELF)2)「人々」(PEOPLE)
3)「社会」(SOCIETY)
通常、私たちは第二段階の「他者」に対する「リーダーシップ」に目を奪われがちですが、「自己への影響力」を盤石にすることをしっかりと念頭においておくことが大切です。「セルフ・リーダーシップ」は、建築物で例えると基礎工事の部分です。基礎工事が確かなものであれば、「人々」への影響力もより強いものになっていきます。次号、各段階の詳細について述べていきます。