最近、「部下が育たない」と悩んでいる方の話をよく聞きます。
「部下に指示しても期待したアウトプットが上がってこない」
「最近の若い社員には覇気が感じられない」
「上司のやり方を"盗んで"学ぼうとする姿勢がない」
等々、その内容は様々です。
どうやったら部下が育つのでしょうか。もっと言えば、どうやったら部下が自分の期待した通りに動いてくれて、そして、組織としても高いパフォーマンスを出せるようになるのでしょうか。
もしかすると、原因は部下にあるのではなく、上司であるあなたにあるのかもしれません。
「部下は上司に対して色々不満を持ちますが、自分が上司になってみると、不満の対象としていた元の上司よりも問題のある上司になってしまうことが多いのではないでしょうか」
こう指摘するのは、「世界基準の上司」の著者、赤羽雄二さんです。
赤羽さんはコマツ、スタンフォード、マッキンゼーとキャリアを積み上げていく中、大企業、ベンチャー企業など様々な会社の上司三千人以上と関わりを持ってきました。そんな「上司」を知り尽くした赤羽さんが「世界基準の上司」で伝えようとしているのは上司としての具体的な実践方法です。
この本には上司として実践するべきことが、事細かに網羅されています。ここまで詳細に書かれている実践書を他に探すのは難しいかもしれません。その内容の一つ一つを見ると、どれも至極もっとも、当たり前のことのようにも思えます。しかし、その全てを実践できているかと問われると、そんな人は少ないでしょう。むしろ、ほとんど実践できていないのが大多数だと思われます。
考えてみると、これまでの日本の社会では、部下を育てるということに、そこまで真剣に取り組んで来なかったのではないでしょうか。取り組まなかったというよりも、取り組まなくてもよかったと言う方が適切かもしれません。
高度経済成長期には、右肩上がりの経済の中、特に人を育てなくても自然に業績が拡大して行きました。また、社員のほとんどが日本人という同質の組織では、人材育成がなくても価値観をある程度共有できていたのかもしれません。
しかし状況は変わり、バブル崩壊が高度経済成長時代に終わりを告げました。グローバル社会が進展して会社に外国籍の社員がいるのが当たり前になってきました。
このような環境の変化によって、人材を育てていない実態が際立って現れているのが現在なのではないでしょうか。部下が育たないのではなく、上司が育て方を知らないというのが実態なのかもしれません。
赤羽雄二さんの「世界基準の上司」は、部下の育て方を学んでこなかった私たちが、改めて上司とは何か、人材育成とは何かを学べる教科書と言えるでしょう。