共創スクエア

株式会社エムオーティクリエイション

「売れる営業」に組織変革するサービス・マネジメントの真髄

すべての経営資源を「顧客接点」に振り向ける全組織的なアプローチ

代表取締役 川内由加

共創スクエア

「エムオーティ」という社名は、『Moments Of Truth(真実の瞬間)』という1978年にリチャード・ノーマン氏が唱え、スカンジナビア航空の経営再建で知られるヤン・カールソン氏の自著のタイトルに由来する。同書では「1000人の旅客と5人の従業員の一回の接点はわずか15秒(平均)。この15秒で顧客が何を感じるかで会社全体の印象や業績がすべて決まってしまう」とある。そうした「真実の瞬間」の概念が盛り込まれたサービス・マネジメントの真髄を、「売れる営業組織」をテーマに川内由加氏に聞いた。

【ビズテリア経営企画 編集部】

営業現場に不可欠なものとは

「売上が上がらない」「顧客満足度も高まらない」「クレームも後を絶たない」・・・営業の現場から聞こえてくるこうした不満の原因としてよく挙げられるのが、従業員の「自律性がない(言われたことしかやらない。自ら創意工夫をしないなど)」、そして「顧客指向性が薄い(接客応対レベルが低い。顧客満足度を高めるための行動が少ないなど)」といった課題です。

ライフスタイルが多様化し、新製品やサービスの開発スピードが加速化している現代では、どの市場も供給過剰であり、人気のある商品やサービスはすぐに競合他社に真似されてしまうケースも珍しくはありません。

このような市場の中で「売れる営業組織」をつくり出そうとする場合、顧客の声にならない潜在的な要望や欲求を理解し、その期待を超えるサービスの提供を実現できる組織であるかが大きく問われます。

そして、その「要」としての重要な役割を果たすのが、「顧客接点」の従業員です。「売れる営業組織」になるには、そうした日々、顧客と接し、その言動や行動の一つひとつが企業のブランドイメージに大きな影響を与える彼らの「自律的行動」と「顧客指向性の高い行動」が不可欠です。冒頭の「悩み」や「課題」はそうした不可欠なものが多くの企業で不足している現状の現れとも言えます。

そこに「一貫性」があるかが重要

そしてもう一つ。「顧客接点」の従業員が「売れる営業組織」になるための必要不可欠なものとして、その発言や行動と「企業のブランドイメージ」との間の「一貫性」および「整合性」が挙げられます。

ブランディングを成功させるために多額な製品開発や広告宣伝の投資を行っても、実際の「顧客接点」の現場で発信しているメッセージとの間に一貫性がなければ、顧客はその企業のブランドイメージや企業メッセージに対して疑問を抱くのではないでしょうか。

よく営業職や販売職を対象としたスマイルトレーニングなどの接客講習を実施した企業から、「一過性のもので、なかなか現場での永続的な効果が期待できない」との悩みを聞くことがありますが、その要因も、そこに企業のブランドイメージとの「一貫性」がなく、営業・販売の個々人のスキル育成としてのトレーニングとしてだけで終わってしまい、組織としての力や財産にはなっていないためと思われます。

すべての企業には「顧客接点」が存在します。そして、この「顧客接点」において一人ひとりの顧客が受ける現場の印象だけでも、企業の業績や将来は大きく左右されます。

言い換えるなら、毎日幾度となく訪れるそうした「顧客接点」において、いかに「顧客にとっての最大の価値」を引き出せるか。そのマネジメントの精度の違いは、企業の収益性や将来性と深く関係しているのです。

「顧客接点」の従業員は社内顧客である

また、「顧客接点」の組織は、顧客からの要求と期待、そして企業内部からの要請と要望が集中する場でもあり、特有のモチベーションやストレスが存在しています。

「顧客接点」の組織を育成し、環境整備を行うにあたっては、それらを理解したうえでのマネジメントはもちろんのこと、「顧客接点」の組織のみならず、そこに影響を与える企業全体のあり方を考えることが大切です。

例えば、直接、顧客と接する機会のない営業や販売セクション以外の従業員の場合、「顧客接点」の従業員を通じて、あるいはその業務を後方支援する形によって、自分たちの組織目標を達成できるような社内の仕組みづくりをします。

それによって、「顧客接点」の従業員(同僚)は自分たちの「顧客」であるという捉え方が社内に浸透し、「顧客接点」における価値の高いサービス提供へ向けた全組織的なアプローチが可能になります。

こうした顧客が認知するサービスの品質向上を第一とする全組織的なアプローチは、一般に「サービス・マネジメント」と呼ばれています。
サービス・プロフィット・チェーン・モデルと変革イメージ

組織変革へのステップ

その具体的な取り組みについては、図の中央の「サービス・プロフィット・チェーン・モデル」にある通りで、その変革のステップは以下のような流れになります。

●ステップ1:顧客との関係性を重視した社会的意義の高い企業理念や価値観・戦略を明示する
●ステップ2:行動の判断基準である価値観をすべての従業員が行動レベルで具体的に共有する
●ステップ3:現状を整理し、実現したい姿とのギャップとそのギャップが生じている核心的原因を見つける
●ステップ4:ギャップを埋めるために必要な価値観と一貫性と整合性のある仕組みをつくり、運用する
●ステップ5:実践を通して、価値観と一貫性と整合性のある組織文化を形成する

この中のステップ・から・・の「ギャップを埋めるための仕組み創り」の部分としては、ここではその概要のみですが、成功事例の一つとして、以下の某アパレル企業の取り組みが参考になるでしょう。

このアパレル企業では、組織戦略の「1.価値観の明示と共有」の部分で「自社は販売会社ではなく、サービス会社であると位置付け」し、「顧客の想像を超えるサービスを提供する」というビジョンを掲げました。

それにより、現場で働く従業員の意識が大きく変わり、競争相手も同業の販売会社の販売員から、極端な例では東京ディズニーランドやザ・リッツ・カールトンなどがその比較対象へと変化していきました。

問われる経営者のリーダーシップ

「売れる営業組織」へ向けた変革のプロセスにおいては、この「価値観の明示と共有」は経営者の役割としても、最も体力と時間を必要とする部分です。経営者自身が「日々、市場と接している『顧客』と『顧客接点の従業員』は企業経営の要である」と本気で心に留める覚悟も必要です。

そのうえで従業員が安心して顧客サービスの力を発揮できるように、経営者が「実現したい姿(ミッションとビジョン)」とそれを実現するためのプロセスにおける判断基準としての「価値観」を明示し、それを行動レベルで共有し、実践を促すなどの「サービス・リーダーシップ」を発揮することが大切です。

繰り返しになりますが、すべての企業には「顧客接点」が存在します。そして、この「顧客接点」での顧客が受ける印象と、企業のブランドイメージにギャップが生じているとしたら、それは今後の企業の業績をも左右する大きな「課題」です。

その意味でも、冒頭の従業員の「自律性がない」「顧客指向性が薄い」といった「顧客接点」における能力発揮の阻害要因を取り除くための仕組みの社内構築、ならびに企業としての「実現したい姿」を明確化し、その価値観を社内全体が共有できる「サービス・プロフィット・チェーン」の企業における役割は大きいといえます。

当社では、多くの企業が、そうした「顧客接点」において顧客にとって価値の高いサービスを生み出し、「サービス・プロフィット・チェーン」を滞りなく回し続けるために必要な組織変革と人材開発に対して、今後も側面からサポートさせていただきたいと考えております。(終わり)

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