共創ワークショップ

株式会社インサイト・コンサルティング

企業にとって人とは何か?   (第3回)

<誰が>育成するのか?

代表取締役 早川 賢雄

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4:<誰が>育成するのか?

CLOの勧め

「人材育成」に関する5つの質問の内、最大のものは<誰が>育成するのか?というものです。「人材育成」は戦略的一貫性をもって行われなければならないと言いました。それはつまり、経営戦略→人事戦略→人材育成戦略とが統合されていなければならないということでした。そしてそれは「戦略立案」これは「経営者の仕事」です。というか、それこそが「経営そのもの」です。ですから、「人材育成戦略」はその上位の戦略との一貫性を保つような仕方で経営者自身によって経営そのものとして創造されなければなりません。

弊社はクライアントに対して繰り返し「CLO」を置くように勧めてきました。CLOとはChief Learning Officer(教育最高責任者)のことです。理想的には、専任の取締役、もしくは執行役員がCLOになることが望ましいでしょう。それが無理でも、経営ボードに属する誰かがCLOに就く。これが第一歩であると思います。

では<誰が>するのか?

では、より具体的には誰がその任に就いたらいいか?大阪で、中堅企業の経営者(社長)を集めたある講演会で結論として次のようなことを言いました。

「次回皆さんが名刺を注文する際に、肩書きの欄に<CLO>と付記してください。CLOと名乗ることで『自分の会社の教育は自分がする』と内外に宣言するのです。日立さんが赤字に転落して、経営陣が刷新されたとき、新社長はいの一番に『幹部教育は自分がする』と宣言された。それから後のV字回復振りはご承知の通り。何をするか(What)、どのようにするか(How)、よりもまずは誰がするか(Who)が大事。だからまずは『自分がする』と言ってしまう。次いで、次回の予算取りのときに幾ばくかでも「教育予算」を取る。担当者が決まって、予算が決まる、そこに権限と責任が生じる。そうしなければ動かないのが組織であり、そうすれば動くのが組織。だからその『初期動力』を社長自らがCLOを名乗ることで調達する」。

5:<誰を>育成するのか?

採用とは養子縁組である

最後に<誰を>育成するかにも触れておきたいと思います。主に採用に関することです。もはや「自社にとって都合のいい人を都合よく調達する」といったことはできない時代が近づきつつあります。そんなことははじめからできていなかったというのが本当なのかもしれませんが、そういうことができるという幻想そのものはこれまでは広く流通し、共有されていました。つまり採用の問題はマッチングの問題であり、採用の失敗はミスマッチの問題であると。

しかし、これからはそうはいかきません。そうはいかないと早く腹をくくった企業だけが「育成」に成功し、「育成」に成功した企業だけが「採用」にも成功する。そういう機序が露骨に明らかになる時代が始まりつつあるのです。

一方で、派遣社員の活用によって、必要な人材を適宜、時価で調達するといったことも可能になってきてもいます。「営業」ですらアウトソーシングされる時代です。とはいえ、そうした仕方で調達できるのは仮に巧くいった場合でも、あくまでも短期的経営目標実現レベルの人員であって、長期的企業存続レベルの人材ではありません。ファブレスメーカーが工場を持たないのと同じように企業が社員を持たない、という事態はありえないでしょう。

であれば、やはり社員を正規に雇い入れ、彼らを「育成」していくという必要は最後まで残ります。今後雇用に関する法制度があたらしくなって、企業側の解雇権がより柔軟に認められるようになったとしても、それでもやはり「正規社員の採用」というのは企業にとって大きなリスク要因です。しかし、そのリスクをとることこそが企業にとってのビジネスなのです。私はクライアントにしばしばこう言ってきました。

<正社員の採用は養子縁組のようなものである>

どこの馬の骨とも分からない者を養子にする覚悟

ではどんな養子をとるべきか?今の自分の必要にあった、そのように定義された必要にかなった部分的能力を持つ、そういう意味で都合のいい人は「お手伝い」として雇い入れることが可能です。「養子」にするまでの必要はありません。「養子」は将来の自社の存続に貢献できるような人です。しかし、だれがそういう人なのかは実は分からない。だから、ある企業の社長は次のような基準で採用を決めています。

<他の会社を落ちた人を採用する>

ここにあるのは自社の仕事の「教育効果」に対する絶大なる自信でしょう。「仕事」をめぐる企業の全文化が「育成」に資するものとなっていないならこうした自信はでてこない。

実子を授かる場合、どんな子供が生まれてくるかは基本的には分かりません。どんな子供が生まれてきても親はその子を受け入れ、慈しんで育てます。でも、養子をとろうという場合にはそこに選別(逆から言えば排除)の論理が働きます。しかし、実は「育成」の反対語は「選抜」なのです。

今では、母体の中の胎児についてさえある種の選別が行われる時代になってきました。だからこそ、養子をとろうとする者があえてどこの馬の骨とも分からない者を養子にとる。とってその養子をしっかり育てる。その子を育てる過程で自分もしっかり育つ。そういう覚悟が何より必要です。そういう覚悟がヒトを育て、自分を育て、企業を育てる。

「企業は人なり」というのはたやすい。しかし、「経営とは教育である」と自覚し、だからこそ、「経営者が教育を担当する」、そういう企業だけが、「企業は人なり」という資格を有している。私はそう考えています。

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