管理職が育たないのは何故かをいくつかの側面から考えてみたいと思います。
第一に、身近に尊敬・信頼できる先輩管理職が少ない。
第二に、管理職を育成する土壌が少なくなってきている。
第三に、若手社員に野心を持っている人が少なくなってきている。
まず、会社に入って仕事を覚えるために先輩社員からいろいろな仕事を教わるかと思います。先輩にもいろいろなタイプがいて、自分ひとりでどんどん仕事をしていくタイプ、指示がうまくまわりをどんどん巻き込んで仕事をしていくタイプ、手を抜きながらもうまく仕事をこなしていくタイプなどなど。
そういった先輩が管理職になっていったときに水を得た魚のように伸びていく人もいれば、重圧につぶされてしまう人もいれば、上に媚びて下には威圧的になってしまう人もいればさまざまです。
その後ろ姿を見ながらああいう先輩になりたい、自分も管理職になって先輩のような仕事をしたいと思う人もいれば、管理職になると忙しくなって、あんなにいい先輩だったのに人が変わってしまったというのも見てしまうかもしれない。そういった先輩には必ずと言っていいほど伝説があったりして、あの人は昔はこうだったとか。
でも、最近は、こういった風景が少なくなってきているのではないかと感じます。いい悪いは別として、管理職として突然転職してきた上司であったり、短期的な業績を伸ばすことや効率をよくすることを過度に注力したりする管理職が増えてきていて、中途で入ってきた管理職は本当に仕事ができるのだろうかとか、業績をあげたら違う会社にいってしまうのではないかと感じてしまう人も増えてきているのではないでしょうか。
こういった状況では、管理職になるプロセスが身近に感じられなくなり、たたき上げの管理職が出てきづらくなっていると感じています。
どの会社も管理職を育成するために様々な育成プログラムを展開していると思いますが、なかなか育たないのが現状であると思います。
業務をするにしても、ERPなどの業務システムやマニュアルが整備されていて、効率よくミスなく業務をこなすことができるようになっています。
システムを使って業務を行うことが多くなっているので、業務改善提案をしたりする気概が少なくなってきていると感じます。
本来は、考える時間、分析する時間、営業や製造、開発する時間等の高付加価値業務に振り分けるのがための効率化であったものが、効率化した分、人も減らしてしまい、ますます業務が単純化してしまってはないでしょうか。
管理職はそのミスなく業務をやらせるための監視役となってしまっています。そうなると、高付加価値を生み出せない組織になってしまい、それを管理する人もなかなか出てきません。経営者が求める管理職が育たないということになっていると感じています。
会社に入って、社長になりたいと思って入ってくる方はどのくらいるのでしょうか。社長は無理でも、この会社に入って、世界をあっと驚くようなプロジェクトをしてみたいとか、世の中にない製品、サービスを自分で立ち上げたいという方はどのくらいいるのでしょうか。
野心を持った上昇志向のある若手社員は、それを実現するために様々な企画・提案や人を巻き込んで仕事をしようと考え、組織の中で人を動かしながら大きな仕事をするようになってきます。
このような経験を踏むことによって自然と管理職になる素養を身に着けていき、周りの人もこの人となら一緒に仕事ができる、ついていけるという判断ができ、周りが自然とその人を管理職として向いていると評価をしてうまくいくことが多くなります。
上記のような3つの要素が会社、組織の中で少ないことが管理職が育たない理由であると私は考えます。