グローバル化・IT化の進展や少子高齢化による労働者人口の減少、価値観の多様化など、日本社会を取り巻く環境の変化を背景に、安倍政権は「働き方改革」を政策の目玉に掲げ、社会全体の労働生産性の向上に向けて様々な取り組みを進めている。
そんな中、東京都中央区にあるエッセンス株式会社が提唱する「プロ人材」と「他社留学」が注目を集めている。これまでになかった新しい働き方やオープン・イノベーションのある人材交流が「働き方改革」を後押しするという。「プロ人材」「他社留学」とは、どのようなものか。同社代表の米田瑛紀氏に話を伺った。
【ビズテリア経営企画 編集部】
注目される新しい働き方、プロ人材
米田瑛紀 (Eiki Yoneda)
エッセンス株式会社 代表取締役
1996年、大学卒業後、地元広島にて人材ビジネスの企業に入社。
売上高5倍、企業規模拡大に貢献後、取締役ゼネラルマネージャーへ着任。
2000年、営業アウトソーシングの専門会社の創業メンバーとして参画。
ゼロから営業責任者として組織を立ち上げ、9年間で20億の売上をあげる営業組織に育て上げる。
自身の強みでもある、「人と人を“結びつける”こと」をコアとした営業課題を解決するビジネスモデルで、2009年にエッセンス株式会社を設立。
営業のプロフェッショナルと成長企業との出会いを通じ、企業の売上に貢献する。
現在では、営業だけではなく、経営、マーケティングといった各分野のプロフェッショナルと企業を繋ぐプロパートナーズ事業を立ち上げ、多くの成長企業を支援するべく活動中。
当社が始めたプロパートナーズというサービスがおかげ様で急速に注目を集めるようになりました。その理由は、プロ人材という新しい働き方を提唱していることにあります。正社員や派遣のような雇用形態ではなく、またコンサルタントや顧問のような外部協力者という形でもなく、これまでにない全く新しい人材活用のスタイルだからです。
プロ人材とは、特定の専門分野の領域で、これまで培ってきた実務経験や実績を、今後は世の中の様々な会社のために発揮しようとする高い志を持った方を指す総称です。
正社員や派遣社員の様に、特定の会社に所属したり常駐したりするスタイルではありません。1つの会社だけでなく、複数の会社に対してその能力を発揮します。例えば、毎週月曜日と木曜日はA社に出社。火曜、金曜はB社、不定期でC社というような関わり方です。
その会社のために、その会社の社員と一緒に汗をかき、経営目標の達成や経営課題の解決に一定の責任を持って取り組むプロフェッショナルです。
成長ベンチャーでも人事部長、財務部長が。しかも低コストで。
プロ人材は企業における人材活用の幅を広げます。
活用ニーズが最も多いのは拡大成長期のベンチャー企業。特に創業間もないアーリーステージでは経営者自らが、人事、総務、経理、マーケティングなど様々な役割を兼務しています。しかし、事業が拡大してある規模を超えた時には、これらの分野に精通した人事部長や総務部長といった立場の人材が必要です。しかし社内にはそのような専門性をもった人材がいない場合がほとんど。また、これらの人材を正社員として採用すれば、例えば、年収1,000万円や1,500万円などそれなりのコストがかかります。
このようなとき、プロ人材を活用すれば、役員クラス、部長クラスの人材に、週に何回かの頻度で会社に来てもらい、実務経験が豊富で専門性の高い能力を発揮してもらうことができます。しかもコンサルタントや正社員よりも安いコストで。
例えばこんな活用方法があります。大企業の人事部門で20年以上の実務経験のあるプロ人材を活用。週に1~2日程度出社してもらい社内の人事マネジメントを担当してもらう。正社員であれば年収1,200万円クラスの人材を、プロ人材であれば年間500万円の費用で迎え入れることができます。そしてそのプロのもつノウハウを社員に伝達していき、社内で人事の責任者を育てあげる事も可能です。
オープン・イノベーションで革新的な商品・サービスが生まれる
またベンチャー企業だけでなく、長い業歴の中で変革を模索している企業にも新しい可能性をもたらします。
例えば、創業40年、50年の歴史ある会社の2代目、3代目社長。このような会社に異業種で活躍してきたプロ人材が社内に入ることで、新しい風を吹き込み、組織内に化学反応を起こすようなオープン・イノベーションをもたらすことができます。
廃れつつある事業と思われたものが、プロ人材の持つ最新のITやマーケティングなどと融合することで、独創的で斬新な商品やサービスに生まれ変わることも可能です。硬質化した社内の組織では実現しえなかった新しいビジネス領域を開拓する事ができるのです。
これらはコンサルタントに依頼すれば多大な費用のかかる大きな企業変革です。
年齢に関係なく能力ある個人が活躍できる
また、個々人に対してはプロ人材という新しい活躍の仕方を提示しています。
年功序列や終身雇用などが過去のものになった今日、会社が個人をずっと守ってくれることはありません。これからは会社に依存するのではなく自立した生き方をする必要があります。
しかし一方で、現在の労働市場では一定の年齢を過ぎると同じ待遇で転職することは困難な状況があります。では起業すればいいかというと、そうでもない。起業しても最初は顧客を見つける営業で苦労するからです。
そこで当社のサービス、プロパートナーズでは、これまでの会社で経験や実績のある方に、プロ人材として、様々な会社にその専門性を発揮して頂ける新しい働き方を提供しています。
当社が長年携わってきた人材ビジネスでの強みを生かし、企業側が業務で求める具体的なニーズとプロ人材として登録頂いた方のスキル・能力および経験・実績などとをマッチさせます。
これによって、プロ人材の方がその能力やスキルを、複数の会社で同時に発揮して頂くことができます。例えば、前職で年収1,000万円だった方が、プロパートナーズのマッチングによって、A社に毎週月曜と金曜に出社して年間400万円、B社に火曜、木曜に出社して年間400万円、C社に水曜出社で200万円という形で各社に貢献できるようなことが実現します。
社外留学で大手企業の幹部育成、中小・ベンチャー側にもメリット
当社のもう一つのサービスにナナサンというものがあります。
「7 割現職、3 割他社留学」の働き方を通じ、キャリア開発を実現する「ナナサン®」 は、次世代リーダー候補に必要とされる、様々な修羅場経験、変化を厭わない志向性等多様な育成ニー ズを満たすために、「現職につきながら他社で活躍」する機会と場、そして送り出し企業と受け手企業のシナジーのある マッチングにより、これまでとは違った新しい研修スタイル、ひいては新しい働き方の可能性を社会に提供します。
大企業において入社して10年、15年になるような中堅の方でも、その業界やその分野での経験しかないために、視野が狭い「井の中の蛙」のような状態であることがあります。
そのような方が、中小・ベンチャー企業のような全く環境の異なる職場に身を置くと、それはある種の武者修行や修羅場をくぐるような厳しいものになりますが、同時にアハ体験やオープン・イノベーションによってこれまでにはない気づきや学びを得ることができます。座学ではなく本気の学びを通じた幹部育成が行えます。
一方、人材を受け入れる中小・ベンチャー企業にとっても、「大企業ではどんな風にやっているのか」といった大企業での仕事の進め方や具体的ノウハウなどに直接触れることができるメリットがあります。また、大企業との幹部候補との人的交流が深まり、新しいビジネスドメインが生まれる可能性も考えられます。
東京電力、カクヤス、エスプール、事例が続々と。
既にこのナナサンのサービスを使った事例が出てきています。
東京電力様で経営企画部において購買業務を担当されている部長クラスの方が、オフィスデザインや内装を手掛けるベンチャーのフロンティア・コンサルティング様に他社留学することが決まっております。
他にも、酒類小売のカクヤス様からITベンチャーのネットプロテクションズ様へ、上場企業のエスプール様から同じく上場企業のAKIBAホールディングス様へと続々と事例が出てきています。
働き方改革を後押しするプロ人材、ナナサン
現在、政府では日本全体の労働生産性を高めるべく働き方改革を進めています。私達エッセンスでもこれまでご紹介したプロ人材やナナサンを通じて働き方改革に貢献できればと考えております。
働き方改革における多様な働き方の1つにプロ人材という新しい働き方を加えることで、個人が社会で活躍できるフィールドがさらに増えるはずです。
また、政府が働き方改革の一環として進めている副業・兼業の解禁についてもプロ人材やナナサンがその推進に役立つと考えています。
現状では企業側の副業・兼業の対応は遅れており、依然として副業は「会社に隠れてこっそりやるもの」という感覚の企業が大半です。しかし、プロ人材やナナサンを活用した形で副業・兼業を社内制度の中に組み込んでいけば、職場環境の改善や社員のモチベーション向上につながり、副業・兼業の推進はむしろ企業にとってメリットに変わっていきます。
そして、プロ人材をシェアするプラットフォームへ
日本は今後、少子高齢化によって労働者人口がますます減っていきます。その中で実績のある経験豊富な人材は貴重な存在となります。これからは優秀な人材を一社が雇用という形で独占するのではなく、プロ人材として複数の企業にその能力を提供することで、優秀な人材の稼働率を上げていくことが、社会全体の生産性向上につながっていくでしょう。
そのような意味において、今後当社のプロパートナーズは、優秀な人材(プロ人材)を社会全体で共有するシェアリング・エコノミーのプラットフォームにしていきたいと考えております。
(終わり)