株式会社ロジクロス・コミュニケーション
取締役兼コンサルティング事業本部 本部長 竹本佳弘
私は大手電気メーカーに開発設計エンジニアとして20年以上在籍していましたが、その間に多くの特許申請(日本特許庁:40件以上、海外多 数)を行っています。その経験から言うと、特許申請の多くは価値がないものです。その中に稀に「光る」特許があって、それが大ヒットする商品につながっています。
この「光る」特許となる発明になるのは、その人が優秀かどうかよりも、むしろ、取り組んでいた研究テーマやタイミング、時期など外的な要因が関わっている場合が多く、「運が良かった」と言える側面があるのは否めません。
また、特許の権利化には多大な費用がかかります。日本だけでなく、米国や欧州など、グローバルに権利化をした場合、1つの特許で200万円もの費用がかかります。従って大ヒット商品の裏には、それに直接関係する特許の費用だけでなく、無数の価値のない特許の費用がかかっていることを知っておく必要があります。
この多大な特許の費用を負担しているのは通常は企業です。ですから、ある研究者が「この大ヒット商品は私の発明によるものだ」と主張しても、そのために企業側は既に多大な出費をしていることを忘れてはなりません。
このような事実を踏まえた上で、企業と研究者は発明の対価を分かち合う必要があるでしょう。アメリカでは、研究者が企業で働き始めるときに結ぶ雇用契約の中で、特許申請の費用負担を誰がするのか、発明の対価はどの程度支払われるのかなどを細かく契約の中で明記しています。
これまでの日本の社会では、このように契約書で細かく決めることはしていませんでしたが、今後は、研究者と企業側の双方が納得できる、日本企業ならではの費用負担や発明の対価の在り方を決めていく必要があるでしょう。