リーダーシップとは「影響力」のこと。前号にて、そう定義しました。そして、リーダーが影響を与える対象には、「自己」(SELF)→「人々」(PEOPLE)→「社会」(SOCIETY)と、3つのステップがあることを説明しました。今号では、第一段階目となる「セルフ・リーダーシップ」について、その目指すべきところに焦点を絞って述べます。
「セルフ」は「自己」と訳されます。日常会話だと、自己は「自分」と同義に使われることが多いと思いますが、心理学では違います。心には意識することのできない「無意識」という領域があります。「意識」と「無意識」。このふたつで心は形成され、その中心を「自己」と考えるのです。つまり、自己とは無意識をも含む、意味の深いものです。
人は誰もが「自分とはこういった人間である」という自分なりのセルフ・イメージを持っています。しかし、「自分は明るい性格だ」と思っていても、他人はそう考えていないことも・・・。つまり、普段意識することのできない自分が、そこにいるわけです。これを「盲点の自己」(Blind self)と言います。さらに、他人も自分も意識できない自己があります。小学生の時、暗い性格であまり喋らなかった級友が、社会人になり再会したら、社交的でとても言葉数の多い人間になっていて驚いた。そんなことを私たちはよく経験します。その級友も小学生の頃、自分がこんな人間になれるとは思っていなかった。こうした「まだ見ぬ自分」とも言える自己を「未知の自己」(Unknown self)と言います。そこでこう定義したいと思います。
「セルフ・リーダーシップとは"自分の知らない自分"に出逢う旅」
自分をどのように評価していますか。自分に対する自分の評価が、豊かな才能の開花していく力を奪う鎖となり、人を縛ります。「自分は所詮こんなもんだ」「どうせ私にはできない」「何をしたって無駄だ」。このような「思考パターン」や心の中でつぶやく「セルフ・トーク」が、自己に大きな影響を与え、行動力を低下させ、成長を疎外します。
セルフ・リーダーシップは、「まだ見ぬ自分」を目指します。「自分も他人も知らない自分」が必ず存在し、その豊かさを信じます。自分をしっかりと評価し、ねぎらい、励まし、そうして影響を与え、どこまでも自己を深く掘り下げていく。ないものを外から手に入れようとするのではなく、"すでに自分の中にある"今よりも才能豊かな自己を発見する。そう考えることがセルフ・リーダーシップにとって大切なことです。