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業務改革の現場に発生する抵抗勢力を同志に変える3つのポイント

 

松山 淳

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人は慣れ親しんだ「今」が繰り返されることを好む。その方が「不安」が少なくて済むからだ。不安はストレスであり、人は本能的に不安を回避しようとする。つまり、現状を打破するような不安が多くなる変化に抵抗するのだ。よって、「業務改革」「組織変革」など、今の職場に変化を引き起こそうとする時、必ずと言っていいほど「抵抗勢力」が生まれる。業務改革のプロジェクトを率いるリーダーにとって頭痛の種である。筆者は変革プロジェクトを率いるリーダーをコーチングでサーポートしてきた。そこで、抵抗勢力への対処の仕方として3つのポイントを述べたい。

【1】「反対」ではなく、「分析」していると「リフレーミング」する

「口を開けば反対ばかりで、まったくやってられないですよ」。業務改革を推進するリーダーからよく聴く愚痴である。話題となっている抵抗勢力のその人は、経営陣の意思決定に疑問を唱えたり、投資回収率の数値見積りが甘いと指摘したり、確かに業務改革に反対をしているようである。だが、会議中にプロジェクトの内容について遠慮なく発言する人は、その性格タイプから、成功の確率を高めるために多角的に分析することを心の習慣としていて、その習慣に従っているだけのことが多い。

つまり、反対しているのでも、嫌がらせをしようとしているのでも、プロジェクトの足を引っ張ろうとしているのでもなく、業務改革を成功させようと考えた上で、現状を分析し指摘や質問をしているのだ。

質問するよりも、それに回答する方がより負荷がかかる。するとストレス状態となり「反対ばかりする人だ」と、感情的に過剰反応してしまいがちだ。

その時、「この人は反対しているのではなく、分析しているだけ」と認知の枠組みを再構成する。これを心理学で「リフレーミング」といいい、心理的負荷を減少させることができる。そして、会議の始まりにでも、「○○さんの指摘はこのプロジェクトのクオリティーを高めますので、今日もお願いします」などと、ジョーク混じりの先制パンチを笑顔で浴びせつつ、自分のリフレーミングを宣言するのだ。そうした小さな行動を通して、抵抗勢力への感情的なしこりを取り除き「成功への思いは同じだ」という同志としての意識を醸成していくことができる。

【2】賛成なのではなく、「無言の抵抗」をしていると考える

ユダヤ人の知恵に「全員賛成の時は否決する」という考え方がある。議論をした上での賛成ならばよいが、会議でプロジェクト進行の報告がなされているのに、誰からも発言がなく、「何かご質問やご意見はありませんか」と問いかけても反応がない時には、ユダヤ人の知恵にならい、危険信号が点滅していると考えてよい。

人の集まる場には集団心理が働く。皆と意見を合わせ、出る杭になることを避ける心理が働く。これを「同調圧力」という。

反対意見があるのに、「会議の時間の長引くのが嫌だから」と発言しない人さえいる。無言の抵抗勢力だ。こうした人は自分の意見が反映されないことで、プロジェクトの後半になって、突然、抵抗勢力となって改革の足を引っ張る人になりがちだ。

そこでプロジェクトリーダーは、会議で発言の少ない人がいたら、部署に出向いたりランチを共にしたりして「1対1」で話す機会をもつとよい。単純に会議で発言するのが苦手だから意見を言わない人もいる。それが改革現場の真実だ。「1対1」なら本音が出て有効な意見も聞ける。抵抗勢力になる芽を早めに摘み取ることができる。「無言の抵抗勢力」への不安を取り除くため、これも泥臭いながらも現実的で効果の高いリーダーシップである。

【3】オンサイトではなく、オフサイトで話し合う場をもつ

日航再建の過程で、経営陣を対象に17回のリーダー研修が行われた。研修が終わると、会費1,000円で缶ビールを片手に議論した。再建プロジェクトを導いたリーダー稲盛和夫氏(京セラ創業者)も参加する。稲盛氏の誘いを断ったり、手短に終わらせ帰ったりする人が出た。抵抗勢力が日航再建の場にも存在したのだ。しかし、こうしたオフサイトでの議論を繰り返すことで、日航経営陣は結束力を強め稲盛氏は抵抗勢力を同志に変えていった。

心の働きを「知・情・意」と3つに分ける考え方がある。職場で業務改革を議論する時、その有効性を問うデータや工程の確さを裏づける「知性」の部分が優先される。言わば正論である。しかし、正しいだけでは人は動かない。人は感情で動く生き物だ。リーダーはメンツをつぶさないように人の「感情」にも配慮する。そして「知」と「情」を融合させ、それを皆の「意志」へとまとめあげていく。同志化のプロセスだ。

その際、職場(オンサイト)での会議だけでなく、会社から離れた場(オフサイト)での語り合いが有効である。業務改革のキックオフミーティングを合宿形式で行う企業があるのはそのためだ。もちろん、予算が無ければ職場近くの居酒屋でもいいし、稲盛氏の手法にならい会社に缶ビールを持ち込んでディスカッションするのでもいい。本音をぶつけ語り合い、リーダーと抵抗勢力との信頼関係は深まっていく。実のところ抵抗要因として、プロジェクトを導くリーダーという人間への不安が大きいのである。その不安が解消されれば、抵抗勢力は「真の同志」となるのだ。

(終わり)
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