目標管理制度の実践的活用
モチベーションアップを如何に実現するか
田代 英治
30代前半くらいまでの若い社員のやる気が見られない、という相談を受けることが多くなりました。彼らに何を言っても響かず、考えながら仕事をする姿勢が見えないというのです。その原因として、仕事がマンネリ化していることがあげられます。企業の多くは上層部が戦略など考える仕事が多く、若い人ほどルーティンワークに偏りがちです。そのため、何となく会社にやってきて帰っていくだけの繰り返しになり、仕事に面白みが見いだせずマンネリ社員になってしまいます。
チームごとに目標管理制度を導入
では、どのようにして活用していけばいいのでしょうか。
まず若手社員に対して、社員教育を定期的に行うようにしてください。モチベーションを上げるようなマインド系の研修をするといいでしょう。実務においては、何より大切なのが「当事者意識を持たせる」ことです。本人の実力よりも難しい仕事を与え、権限委譲することでやる気にさせ、当事者意識を持たせることができます。
次に、職場でのミーティングを活用して課単位で目標管理を行います。手順としては、最初に課長が組織の目標を定めます。たとえば、人事部内であれば「若手の離職を食い止める」という目標を立てる。それをもとに、それぞれの目標に対して各人がどんな役割を担うのかを全員でミーティングを通して決めていきます。ある人は「若手社員と常日頃から接して情報を仕入れる」という役割を設定したのであれば、そこから個人の目標「毎日若手の誰かと一緒に食事をする」のように落とし込んでいきます。そうすることによって、組織目標から個人目標へとつながり、メンバー間の役割分担もハッキリするため、お互いが納得できる目標設定が可能となります。
その際、「役割マトリックスシート」というものを作成してはいかがでしょうか。大きな模造紙を用意して、チームの任務と各人の目標を書き込んでいきます。こうすることにより一目で各自の目標が分かります。
若い人は、なぜその仕事をやらなければいけないのかを理解しないと動きません。そのため、このミーティングの中で「何のための仕事なのか」「全体の中でどういう位置づけなのか」を明確にしてあげることで、スムーズに仕事へと取り組んでくれるようになります。
人材多様化に対応した制度構築
少し前まで成果主義と盛んに言われて、導入する企業が多く見られました。しかし、内実は結果主義で、社員間に個人主義がはびこり、チームプレーができなくなってきました。そのため、成果主義からの揺り戻しがいま来ているように思えます。
しかし、そうはいっても全面的に成果主義を廃止すべきではありません。成果とは何かをしっかりと定義することで、適切な人事制度を作ることができます。形は成果主義であるが、内実は今までと全く変わっていない例を多く見てきました。私がコンサルティングを担当したあるホテルチェーンの人事制度では、親会社である電鉄会社の人事制度をそのまま移行しただけでした。電鉄事業とホテル事業は全くの別物です。ホテル業界のスタンダードに合っていなかったため、従業員のモチベーションは低く、競争力も著しく低下した状態でした。
そうした状況を改善する方法として、年功ではなく職務に応じて給与体系を整備することをおすすめします。仕事の内容に応じて給料が決まるため、不公平感が少なくなります。また、年功で賃金が上昇するわけではないので、人件費のコントロールも可能です。結果的に若手の給与が引き上げられ、年配の方の給与が下がるため、若手のモチベーションアップにもつながります。ただし、不利益変更として裁判になることもありますので、年配の方に対しては調整給を支給することで急激に賃金が低下することがないよう注意してください。人材はますます流動化して、女性・年配者・外国人といった新しい労働力が増えているため、一概に年功で定めることは難しくなってきています。ぜひ新しい成果主義を検討してみてください。
人事制度の再構築を支援します
弊社では人事制度の再構築や運用を中心にコンサルティングや研修を行っております。私自身、大手海運会社において人事部で長年仕事をしてきましたので、人事の方と問題意識を共有しながら仕事を進めることができます。また、社会保険労務士の資格を持っているため、法律の面からも支援が可能です。今の人事制度がどうもうまくいかないと感じていらっしゃる方は、私どもに一度ご相談ください。