共創スクエア

ミルラーニングメディア株式会社

管理者の言動が働きやすい環境を創る

 専門家に聞く、「社員が働きやすい環境とは」

代表取締役 小前俊哉

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企業経営でもっとも重要なのが「人」。社員が活き活き働いている職場かどうかで業績は大きく変わりますが、これが実現できていない企業が多いのも事実です。そこで今回は「働きやすい環境」とは何かについて専門家のご意見を聞いてみました。

今回は、ミルラーニングメディア株式会社 代表取締役 小前俊哉さんからの回答をご紹介します。
【ビズテリア経営企画 編集部】

社員がイキイキと働くことができる環境を構築するためには、さまざまな要素があります。そのなかで、私は今回2つの要素についてコメントいたします。

まずは法令を順守する

第一に、経営者側が最低限の法令を順守し、労働時間管理や報酬や安全管理面で社員に不安や怒りや疑念やストレスをかけないことです。

ここでの法令順守とはハラスメント等は別要素であり、最低限の生理的欲求と安全の欲求を満たす環境を社員に提供するということです。奴隷制度のような社員(正規非正規に関わらず)に対する経営方法では、いつか組織破綻・経営破綻をきたします。私が研修やコンサルティングを行っている会社では、このような問題は無いのですが、もし法令を無視した経営者の売上(利益)重視の環境であれば、どんな研修も何の意味も効果もなしません。この問題は人材育成の問題ではなく、社会労務士等がコメントするマターですので、「社員が働きやすい環境とは」この第一の要素がクリアできている状態でコメントしたいと思います。

管理者の言動が職場風土に影響を与える

第二の要素は、管理者の言動です。

組織内の人材がイキイキするか、仲良しクラブか、燃え尽きるか、サビツキ(やらされ)かを決定づけるのは経営者や管理者の言動(以降、経営者と管理者を管理者と称します)なのです。管理者の言動の70%以上が、職場風土(人材)に影響を与えている事実は、人材育成の世界では常識化しています。

働きやすい環境とは、人材が帰属・承認(尊敬)の欲求が満たされ、人材の多くが自己実現の欲求を目指している環境だとも言えます(マズローの欲求のピラミッドから引用)。

自分の存在理由

人材が以下のように理解・認識できるような管理者の言動が「働きやすい環境」を構築します。

「社員が働きやすい環境」では、人材の多くが、「自分の存在理由」を理解・認識しています。具体的に言えば、人材の多くが「組織と自分のお客様は誰なのか」「そのお客様のどのような問題解決を組織や自分が行っているのか」「お客様はどのように満足していただくか」「その結果、組織や自分は報酬がいただけるのだ」を理解・認識しているのです。

目的、存在理由を部下に示す

仲良しクラブ、燃え尽き、サビツキ組織等の「働きにくい環境」の人材は、売上・利益・シェアー等の会社側ノルマだけを重視して(重視させられて)仕事をしています。このような人材は、価値創造をする心の強さと余裕が皆無で、メンタルにも非常に弱い。実際、うつ病になった自分を振返ると、燃え尽きの中で会社側ノルマだけを考え、お客様の顔すら想像しない仕事をしていました。つまり「正しい自分の存在理由」が欠落していたのです。

要するに社員が理解する「仕事の目的」が、「会社側ノルマの達成」ではなく「お客様の問題解決」であり、「お客様への価値の提供」としていることが「社員が働きやすい職場」の要素のひとつなのです。

管理者は組織人材に70%以上の影響を与えるのですから、正しい「仕事の目的や存在理由等」を管理者が如何に言動で、部下に示しているかが「社員が働きやすい環境」へのポイントとなります。

主体的に価値創造ができる社員に

「いいから客のところへ行ってこい!」「黙って言われた通り作れ!」「やればいいんだやれば!」「ノルマ達成することが唯一の目的なんだ!」「仕事の目的は金だよ金!」「言われた通りしろ!」などの指示命令型言動のみを繰り返している管理者のいる組織は、到底「働きやすい環境」とは言えません。

もちろん組織にとって「金」は重要ですが、その金がどのように組織に入ってくるのか、会社組織の「企業目的」や「仕事の目的」を正しく部下に伝えなければ、継続的・発展的にお金が入る組織にならないはずです。主体的に価値創造ができる社員がたくさん存在する組織こそ経営上重要なはずです。

主体性を無くす育成言動

言われたことしかしない人材や報酬だけもらえばそれでいいという人材にとってみれば、働きやすい環境かもしれません。しかし、多くの管理者が人材の主体性や価値創造を求めており、「なぜ言われたことしかできないのだ!」などと人材に主体性の無さに対して叱責を繰り返すでしょう。しかし管理者自身が、考えない人材を育成している、つまり主体性を無くす育成言動をしているのです。そのことに気付いていない管理者も少なくありません。

またこういう職場環境は、パレートの法則での下位20%の人材に居心地の良い環境であっても、残るハイパフォーマー80%には「働きやすい環境」とは言えないのではないでしょうか。

「社員が働きやすい環境」とは、「良い緊張感」が存在する環境でもあります。緊張感が存在しない主体性を失った人材の溜まり場は、仲良しクラブやサビツキ燃え尽き環境であり、真の働きやすい環境とは言えません。

目的や理由を伝える

「社員が働きやすい環境」を作る管理者の具体的言動の一つは、「仕事の目的」「存在理由」を人材に伝える言動を行うことです。

仕事を任せる時、仕事の目的や理由を伝えているでしょうか。納期と質のみ伝えてはいないでしょうか。または金のことだけ伝えていないでしょうか。また管理者自身が、自社の存在理由や自分の存在理由を否定する言動を部下に行っていないでしょうか。そもそも管理者自身が「会社や組織の存在理由」「仕事の目的」「組織と自分のお客様は誰なのか」「そのお客様のどのような問題解決を組織や自分が行っているのか」を正しく理解・認識しているでしょうか。

「社員が働きやすい環境」を作る具体的な言動

二代目経営者の中には稀に「先代の作った会社は潰すわけにはいかない」という「目的」を毎日社員に伝えるような言動をします。昔の武家ではあるまいし、そのような「目的言動」は社員にとっての働きやすい環境やモチベーションに繋がるでしょうか。

「社員が働きやすい環境」とは「社員が"生きがい"や"やりがい"を感じる環境」とも言えます。

「社員が働きやすい環境」とは「経営者や管理者の言動」が作っているのです。

経営者や管理者が「社員が働きやすい環境」を作る具体的な言動を、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。私にとって、そのお手伝いをすることも「仕事の目的」なのです。

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