共創スクエア
2017/02/02
共創スクエア

デフレから脱却し強い経済を目指すアベノミクス。これまでの成果を見てみると、企業収益は過去最高を記録、雇用者数は増加し、賃金のベースアップも3年連続の上昇と、景気回復に向けて着実に進んでいるように見える。

しかし一方で、景気回復の実感が乏しいとの指摘も多い。特に中小企業や地方経済においてはその傾向が顕著だ。これを理由にアベノミクスは失敗とする見方もある。

これからの日本に何が必要なのか。今回は参議院議員の和田政宗氏に話を伺った。(聞き手: 編集長 勝山牧生)

【ビズテリア経営企画 編集部】

これまで安倍政権が実施してきた経済政策、いわゆるアベノミクスは、概ね評価できると思います。金融緩和によって物価上昇を目指そうとする考え方は正しいと思いますし、またこれ以外の方法で景気回復を軌道に乗せていくのは難しいでしょう。この道しかないと思います。

名目GDP5%くらいを目標にしっかりとした金融緩和を行い、併せて実体経済を足腰の強いものとしていけば、10年で国民所得を1.6倍程度にもっていくことは十分可能だと思います。

マクロ政策としての金融政策は方向は正しいのですが、これに合わせる各施策がまだ十分に成果を出せていません。特に地方ではまだ景気回復を実感できているところは少ない。アベノミクスを地方の隅々まで如何にして浸透させていくかが課題です。

地方創生というキーワードで様々な政策が打たれていますが、正直なところ過去の政策の焼き直しと思われるようなものも少なくありません。これからは政策に発想のブレークスルーが求められていると思います。

日本人の特性を活かしたモノづくり経営の推進

地方経済を如何にして活性化させるか。その鍵は2つあると考えています。まず1つ目はモノづくりです。

地方には凄い技術を持った人や会社がまだまだたくさんあります。しかしその多くは事業として活かせていないのが現状です。このような、いわば眠ったままの技術や特許を、第三者がきちんと評価し、企業が持つ資産として評価できるようにする必要があります。それによって技術や特許が担保価値を持つようになります。

こうした情報をデータベース化して、その存在を探しやすくするための基盤整備も不可欠です。

そして、このような一定の担保価値を持つ技術や特許が正しく評価され、最終的には政府系金融機関のみならず地場の金融機関からの融資がつくようにするのが目標です。

現状では事業を拡大するため新工場を作りたくても、「御社の会社の規模では融資はつけられない」と融資を拒否される場面でも、保有する技術が資産として評価され融資がつくようになれば、モノづくり産業は大きく飛躍します。

日本人は古来より、手先が器用だったり、誤差が少なかったりなど、きめ細かい作業を得意とする特性があります。しかしこれがあまりに当たり前であるため、企業も自らが持つ技術がどれだけの価値を持っているのか評価できず、マッチングにつながらないという面もあります。

日本人の特性に着目して、それを評価して、融資の実行につなげていけるようなブレークスルーで、地方から新しい事業を次々と生み出していけるような政策が必要です。

城郭の復元を地方のアイデンティティーにつなげる

地方経済の活性化のもう一つの鍵はインバウンド、すなわち、訪日外国人旅行者を地域に呼び込むことです。年々その数は増加していますが、まだまだポテンシャルは高いと思います。

大事なコンセプトは、地方のアイデンティティー。その地方にしかない魅力を如何にして作り、あるいは発信していくかということです。

外国人が日本に観光する際に求めているのは、文化や伝統、風習などに根ざしたものが多い。神社仏閣などはその代表例でしょう。

今、これらに加え、各地にあった城郭を復元させることが、その地域のアイデンティティーをより際立させて、結果、インバウンドの促進につながると考えています。

日本には江戸時代まで、数多くの城郭がありましたが、明治に入って廃城令などによって、その多くは壊されてしまい、現在に至っています。

これまでは文化財保護法によって当時の設計図や絵図面のない城郭の復元はまず認められませんでしたが、この分野での規制改革を通じて城郭の復元ができるようになれば、インバウンドの可能性がさらに広がるでしょう。私の国会質疑では文科大臣や国土交通大臣より前向きな答弁が出ています。

城郭はそれぞれが特色があり地域の特性や誇りと結びついています。城郭の復元は地域のアイデンティティーを取り戻し観光客を呼び込むという一石二鳥の効果が得られるはずです。

そして日本の誇りを取り戻す

このようにモノづくりとインバウンドの2つの分野で発想のブレークスルーが起これば、地方経済は活性化していくでしょう。そしてそれがデフレ脱却を実現させ、夢の持てる社会につながっていくはずです。

日本人はバブル経済崩壊後の長い不況によって、かつて輝いていた時代の誇りを失いかけています。アベノミクスとこれら発想のブレークスルーによって、再び誇りを取り戻すことが可能になるのです。

(終わり)
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