独立行政法人労働政策研究・研修機構が「従業員の意識と人材マネージメントの課題に関する調査」という従業員調査と企業調査を実施した結果報告書が公開されていますが、これによると、 3年前と比較して仕事に対する意欲が低くなったと回答した従業員の割合は29.4%と、高くなったと回答した従業員の割合である31.9%と拮抗しております。リーマンショック前の調査ですから現在ではさらに悪化している可能性が高いと考えられます。従業員の仕事に対する意欲が低くなった理由として多かった「評価の納得性が確保されていないから」に着目してみたいと思います。
評価の納得性を確保するためには、評価基準をわかりやすいものにする必要があります。評価基準をわかりやすくするためには、評価項目の一つ一つを担当職務や役割ごとに具体的な表現で策定するのが効果的です。具体的に表現できれば、評価者にとって客観的な評価がしやすくなり、結果として評価そのものの公正さを保つことに結び付いていきます。それから、評価後の面談において結果に対する共通認識をもつことが重要です。評価結果が従業員にとっておもわしくないものであっても、評価基準が具体的であれば納得性の高い説明ができることで、ある程度は納得してくれるはずです。そして、どのように改善すれば評価が上がるのかを理解させることができればモチベーションを向上させることもできます。
しかしながら、これを1から自前で策定するとなると中堅・中小企業にとっては、大きな負担になります。そこで、中央職業能力開発協会がさまざまな業種の企業の協力を得て策定した職業能力評価基準を活用することで大幅に策定コストを低減することができます。なぜなら、職業能力評価基準は職種単位に前述したような具体的な表現を使って策定されているからです。1つの職種は「職務」~「能力ユニット(課業)」 ~「役割ごとの職務遂行基準」に細分化されています。最下層の職務遂行基準を複数個集めたものが業務プロセスといえる能力ユニットを形作っているので、成果主義とは一線を画した成果につながるプロセス評価を実現することになります。すべての業種についてその策定が完了しておりませんが、事務系職種については業種に関係なく利用することができます。
納得性の高い評価制度が安定軌道にのれば、企業はより多くの時間を人材育成・能力開発に注ぐことができるようになります。従業員が仕事を通じて成長を実感できれば、おのずと前述した調査における賃金の低さを除いて、仕事に対する意欲低下理由のうちで1番多かった「仕事の達成感が感じられないから」の割合をも減少させることができるのではないでしょうか。 (終わり)