共創スクエア

株式会社 アンカーネットワークサービス

「万人万物共存共生」社会の実現へ

日本企業初の「R2」取得企業がリサイクル業界に変革をもたらす。

代表取締役社長 碇 隆司

共創スクエア

成長のキーワードとして注目されるリサイクル

碇 隆司 (Takashi Ikari)
株式会社アンカーネットワークサービス
代表取締役社長

不要になったモノを回収して再利用することをリサイクルと呼ぶようになって久しく経ちました。近年、この言葉が新しい成長のキーワードとして注目を集めています。

この流れの背景にあるのが、環境問題に対する社会全体の関心の高まりや消費者の中古品に対する意識の変化です。特にパソコンなどのIT機器ではその傾向が顕著です。

かつては、中古品にマイナスのイメージが付きまとっていました。しかし最近では、企業が購入するIT製品においても、費用対効果の観点から、新品より中古品を選択するケースが増えています。

さらに、先進的な企業では、IT機器の処分を経営戦略の一環として行うITAD「IT Asset Disposition」(情報機器資産の処分)としての取り組みも見られます。欧米企業では広範囲に広がっているITADは、今後、日本にも普及の波が来るでしょう。

また、事業者側のビジネス・モデルも進化しています。リサイクルと言っても、単に不要となった製品をそのまま中古品として再販するだけではありません。製品によっては、一部の部品を取り換えた上で販売することもあります。例えばパソコンの場合、セキュリティの観点からハードディスクは破砕して、新しいものに取り換えた上で販売するようなケースです。逆に一部の部品だけを取り出して販売することもあります。

このように不要な製品を回収すると、それを収益化する方法は複数あります。この中で最近、特に注目されているのが、IT機器などの電子基板を回収して、そこから、金、銀、パラジウムなどの貴金属を抽出して収益化するマテリアル・ビジネスです。

さらには、これらの取引が、国内だけでなくグローバルに広がってきたのも着目すべき点でしょう。

環境問題への意識が高まり、それを取り巻くビジネスも進化してきました。これらは総称して、3R(Reduce、Reuse、Recycle)と呼ばれて、持続的な社会を構築するためのキーワードとなっています。

環境問題や人権問題への対応

しかし課題もあります。廃棄物の処分などが適切に行われていない実態があることです。このことが、今、日本だけでなく世界中で社会問題となっています。

例えば、先進国で使われなくなった電子機器がリサイクル用と称してアフリカなどの途上国に輸出されています。しかしその実態はリサイクルではなく、機器から銅などの金属を取り出して販売することです。

問題なのは、この金属を取り出す過程において、周囲の環境に配慮せずにそのまま機器を燃やしていることです。これによって有毒ガスが発生して、大気汚染や水質・土壌汚染など深刻な環境被害を引き起こしています。さらには地域で生活する子供達の小児がんの異常な発症率などの健康被害までもが報告されています。

これは環境問題だけにとどまらず途上国の人権問題にも関わっています。廃棄される場所は貧困地域と重なっていることが多く、環境被害によって最低限の社会生活すら危ぶまれている状況です。このことが貧富の差の拡大に拍車をかけていることも問題です。

「R2」認証でパートナーとの一体感を高める

このような3Rの各プロセスで起きる様々な問題の背景には、そこに携わる業者の意識や対処の仕方がバラバラであることなどが挙げられます。悪質な事業者は当然許されませんが、そうでなかったとしても、必要な処置に対する意識が事業者毎に異なっている現状は変えていく必要があります。

そこで私達アンカーネットワークサービスでは、業界全体を変えるためにはまず私達自身が変わらなければならないと考え、2016年6月に日本発祥の企業としては初めて「R2」認証を取得しました。

R2(Responsible Recycling=責任あるリサイクル)は、電気・電子機器を取り扱うリサイクル関連事業者の行動およびその評価のためのガイドラインです。米国環境保護庁(EPA)の指導の下で開発され、米国の非営利団体SERI(Sustainable Electronics Recycling International)により運営・管理されています。

R2を取得することにより、IT機器などの資産を処分する際に、環境保護やコンプライアンス、マネジメントなどに一定のレベルがあることを客観的に証明することができます。

私達だけでなく、リサイクルに関わる様々な企業がR2を次々と取得していけば、リサイクルの取引の流れ全体に安心感・信頼感を与えることにつながります。R2を取得した企業同士が、地球環境に対する共通の価値観や規範を持つ「仲間」として、リサイクル市場を発展させていきたいと考えています。

万人万物共存共生の価値観を広める

このように私たちアンカーネットワークサービスが他社に先駆けた取り組みを進めていることには理由があります。実は当社では次のような経営理念を掲げています。

「万人万物共存共生を成し、喜びを分かち合うこと」

私達一人一人は、それぞれかけがえのない存在です。またパソコンや電気製品など世の中にある様々な製品も技術者や職人さん達が一生懸命に魂を込めて開発し作り出した存在です。

その意味において、人への尊厳があると同様に製品への尊厳もあるはずです。この感覚は日本人が古来より持っているものではないでしょうか。秩序や礼節を重んじて、自然に対して敬意を表す。モノを粗末にせず大切に扱う。このような文化の中で日本人は長年、ともに助け合う共生社会を築いてきました。

私達が掲げる企業理念には、このような日本社会が培ってきたものを、事業を通じて表現したいという想いが刻まれています。

R2を取得したことは、単にビジネスのつながりを広げることが目的ではありません。「万人万物共存共生」の価値観を共有して、多くの企業と地球環境の保全について一体感を高めていくことがねらいです。

メーカーの本格参入を促し、サーキュラー・エコノミーの実現へ。

このように可能性が見込まれるリサイクル・ビジネスですが、市場が大きく成長するには、IT機器メーカーの参入が不可欠です。

これまでの私達の社会は、生産された製品が、流通・消費・廃棄といったプロセスをたどる一方通行のサプライチェーンによる経済モデルでした。しかし近年、これに再利用・再生といったプロセスを加えて、再び生産側にモノを戻して循環構造を作り新しい価値を創出させるサーキュラー・エコノミーという考え方が注目されています。

メーカーがリサイクル・ビジネスに参入にすることで、サーキュラー・エコノミーが実現し、大きな市場となることが期待されます。

しかし、メーカーの本格参入には課題もあります。新製品の市場投入とリサイクルとは短期的には二律背反の関係にあると思われているからです。つまり「リサイクルをやると、新製品が売れなくなるのでは」という意識があることです。

当社としても、IT機器メーカーがこの分野に参入できるために様々な協力を行っていき、サーキュラー・エコノミーの実現すなわち、「万人万物共存共生」の具現化に取り組んでいきたいと思います。

(終わり)
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