「変化とはNorm(必然的に起きるべきもの)である」、と言われるように、変化をしないものはほぼ存在しませんが、どれくらいのリーダーの方々がこのことをしっかり理解しているのでしょうか。
日本企業の平均寿命は25年という日経の調査結果の発表があってからすでに15年。以前にも増して、グローバル・ビジネス環境は様々な業界に広がっており、急速な環境の変化に対応できずに、消滅していく企業はまだまだ増え続けています。皆さんの組織はどのように激しい生存競争の中、勝ち残っていっているのでしょうか?
ダーウィンは、その著「種の起源」で、「強いものや賢いものが生き残るのではない、環境の変化に対応していくものが生き残るのである」と述べていますが、ビジネスの世界も同様です。リーダーは、環境の変化を適時に察知し、ビジネスを、そして組織を変化させながら、成長し、業績向上を図っていかなくてはなりません。
今回は、リーダーの知るべき、「組織変革の基本ステップ」、「変革失敗の要因」、とリーダーのするべき「変革時の役割活動」をご紹介します。本情報が、皆様の組織の人材育成や組織開発のしくみの更なる強化のための一助となれますと、何よりです。
今回ご紹介するのは、欧米企業また欧米の変革コンサルタントの間でも、かなり基本的概念としてノウハウに組み入れられている、ハーバード大学のコッター教授(John. P. Kotter)が唱えている「変革の8ステップ」です。これは、先般ご紹介した、K.レビンの「変革モデル」の基本原則が土台にあります。
私も前職P&G時代に日本、アジア、欧米での10余年の変革推進の体験をしましたが、コッター教授の提唱する活動の多くは基本要素でしたので、一度試されることをお勧めします。
1. Increase urgency (危機感を高める)
2. Build the guiding team (変革チームを編成する)
3. Get the vision right (正しいビジョンを創る)
4. Communicate for buy-in (納得を得るコミュニケーション)
5. Empower action (能力を強化し、計画を実行する)
6. Create short-term wins (成功例を早く生み出す)
7. Don't let up (変革活動を継続する)
8. Make change stick (継続のしくみを創る)
(コッター教授の著書「Heart of Change(変革の真髄)」より引用)
「人は変化を嫌う」という基本的特徴がありますが、急にきた大きな変化だけでなく、日常活動の小さな変化に対しても、拒否反応を示すものです。チェンジ・マネジメントとは、そういった人の変化に対する不安感を和らげ、やる気を起こさせ、新たな行動を推進しながら、目標を達成していくこと、またその過程です。(移行期を管理するためのトランジション・マネジメントとも言われます。)
変革を成功させるための基本的要は、以下のとおりです。
モチベーション:新たな戦略、製品、計画、制度、やり方、新たな能力研修、などを実行したい、と感じさせるもの、動機づけさせることが不可欠です。
ビジョン:変革の先(到達時)にはどのようなことが待っているのか、自分たちの組織は、ビジネスは、仕事は、どのようになっているのか、などが明確になっていることは、参加者の不安感を和らげ、やる気を起こすには大変重要です。
プロセス:変革を成功させるための流れが明確になっているのはもちろんですが、効果的な活動が理にかなったステップで進められていることが重要です。
能力:プロセスが明確になっても、新たな活動や行動を実行するために必要な能力がなければ達成できません。新たな能力を培うことは、変革を成功させるのに不可欠です。
さて、皆様のこれまでの変革では、どのような活動が効果的でしたでしょうか?逆に、効果的でなかった活動はどのようなことでしたでしょうか?
1980年代に急増した戦略的変革、1990年代に始まったBPR、90年代後半以降に数を増した人事制度の変革、またM&Aなどの大半が成功できていないように、変革の困難さは変わっていません。数々の調査で分かっていることは、変革失敗のほとんどの原因は、リーダーの変革へのコミットメントと変革に関する基本知識や能力の不足ですが、皆様の組織ではいかがでしょうか?(図表1の変革失敗の原因を参照ください。) 。
1. リーダー/経営陣のコミットメントと支援不足 2. ビジョンの欠落 3. 変革戦略や計画の不備 4. コミュニケーション不足 5. 変革におけるメンバーの参画不足 6. 実行までの準備不足 7. 変革マネジメントの不備 8. 継続的努力の欠落 9. 新たな行動や能力を持続させるしくみの欠如
「すべての変革はリーダーから始まる」と言われるように、変革を成功させるためのリーダーの役割は非常に大きなものです。リーダーが本気になっていない変革はほぼ成功しません。全社規模であれば、社長と経営陣、事業部や部門であれば、事業部長や部門長とその直属の部下全員が、本気で変革を決意し、支援していかなければ、成功は危いものです。丸投げをするリーダーは許されませんし、リーダーがコミットしていなければ、大掛かりな変革は始めないようが無難です。(図表2に変革におけるリーダーの役割を示してあるのでご参照ください。)
1. 明確なビジョンとゴールを示す 2. 計画、実行、確認、効果測定する 3. コミュニケート(語る、語る、語る・・・) 4. 積極的に、メンバーの思いを聴く 5. 理解を示し、サポートする 6. よい変化のお手本となる
リーダーシップとは、「集団の目的やビジョンを明確にし、その達成に向かってメンバーに影響を与える」ことです。できるリーダーは、メンバーのやる気を高める明確なビジョン、すなわち将来の構想やありたい姿を打ち出します。明確でやる気を高めるビジョンがなければ、メンバーはバラバラの方角を向いていますので、当然ベクトルが揃うことはありません。
そして、メンバーと多くの対話の機会を持ち、感情や思い、考えを理解し、方向性や計画のすり合わせを行います。時間が足りないからと言って十分なコミュニケーション、相互理解を行わなければ、必ずその変革は失敗に終わります。EQの少ない、コミュニケーション能力に欠けたリーダーのもとでは、ほとんどの変革は成功できません。
私のこれまでの経験でも、組織の成功にパッションを持ち、メンバー全員と対話し、動機づけ、自発的に新たな活動・行動を生み出していくリーダーが変革を成功に導いてきました。皆様がパッションを持って変革を推進するのか、または、パッションを持った人を変革のリーダーにするのか?さて、次の変革をどう成功させましょうか??
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