共創スクエア

株式会社フュージョン

不況時に行うIT支出削減

 

広兼 修

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企業経営におけるITの重要性は高まり、総務省統計によると企業設備投資にしめる情報化投資比率は2割を超えている。特に昨年秋までの数年間は好景気に支えられ、多くの企業が業務効率化や社内情報共有、J-SOX対応等で積極的にITに投資を行っていた。しかし今は100年に1度といわれる不況の最中。ほとんどの企業はコスト削減に取り組んでおり、IT支出もできるだけ抑えたいと考える経営者は多いのではないだろうか。しかし、思うようにコスト削減できていない企業は少なくない。IT支出削減のポイントをフュージョン代表広兼修氏に伺った。

【ビズテリア経営企画 編集部】
広兼 修 (Osamu Hirokane)
東京工業大学大学院修士課程終了後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社し、企業の経理・製造・人事業務におけるIT化の構想・設計・開発に従事。その後、外資ERPベンダーにてコンサルティング部門の立ち上げ、販売、物流ソフトウェアの導入責任者として従事。
1999年、経営視点および現場視点を重視したIT化支援を目的とした株式会社フュージョンを設立。現在は、業務およびシステムのコンサルティング、IT戦略立案、プロジェクト管理支援、企業のCIO補佐などを中心に活動を行う。

片手落ちなIT支出削減

企業で発生するITの支出は、大きく2つに分類できます。1つは、新しいシステムの導入に必要な「新規投資」です。もう1つは、過去に導入したシステムを利用する限り継続的に発生する「保守・運用費」です。

多くの企業では、「新規投資」を凍結・延期することにより、IT支出の削減に取り組んでいます。確かに現在利用しているシステムがあれば日々行っている業務は遂行できるため、「新規投資」を抑制しても業務への影響は少ないと考えます。しかし過度に「新規投資」を削減すると、その間ITによるサービス差別化を進められず、 サービスが陳腐化します。これは将来の企業競争力低下につながるため、過度の「新規投資」削減はすべきでありません。

本来もっと取り組むべきは、「保守・運用費」の削減です。売上100億から1000億の企業の場合、IT支出の65%が「保守・運用費」で、「新規投資」は35%にしか過ぎないのです。

ではなぜ、IT支出で多くを占める「保守・運用費」の削減が進まないのでしょうか?

本格的なIT支出削減は経営の旗振りが必要

「保守・運用費」の削減が進まないのには2つの理由があります。

● IT支出削減によるリスク

● IT支出削減の検討・推進体制

「IT支出削減によるリスク」とは、「保守・運用費」は現行システムを利用・維持するために必要な支出なのだから、削減したら業務等に影響がでるのではという危惧のことです。

例えば、これまでシステムの改善要望をIT部門に伝えれば対応してくれていたのが、「保守・運用費」を削減したことにより対応が実施されず、業務に支障が出る可能性がある。またはシステムの運用要員を削減したことにより、問題が発生した時の対応が手薄になり、問題解決までに時間がかかってしまう可能性がある、などです。

「IT支出削減の検討・推進体制」とは、実際にIT支出削減を検討するのは情報システム担当者やシステムの利用ユーザーが中心であり、IT支出削減可否を経営視点で行っているわけではなく、彼らの視点で実施しているに過ぎないということです。システムの利用ユーザーとしては、現在利用しているシステムが利用し難くなる、サポートが受けにくくなる可能性があるようなIT支出削減策には、賛成したくはないと思います。自分の業務に支障がでるかもしれないと思うからです。また情報システム担当者も、稼動しているシステムのサポートを低下させればユーザーからのクレームが増え、かつ外部ITベンダーと煩雑かつ困難な交渉が必要なため、できれば「保守・運用費」の削減には取り組みたくないのです。このような背景もあり、削減効果は小さいが削減しやすい事項のみ実施され、削減の難易度は高いが削減効果が大きい事項は積極的には実施されず、「保守・運用費」の削減が進み難いのです。

またシステムの保守・運用を外部のITベンダー等に委託している場合、ITベンダーは自社の売上減につながる提案は行い難く、「保守・運用費」の削減が進み難いのです。

確かに「保守・運用費」の一律大幅削減は、システムを利用している業務にリスクを及ぼす可能性があり、避けるべきです。しかし経営の視点でリスクを見極め、適切なリスク対策を取れば、削減できる費用は多くあります。

例えば経営の視点があれば、会社として優先度が低い業務用のシステムは、業務への影響が小さい場合サポートレベルを下げる、もしくは廃棄することを検討します。ユーザーの作業負荷が増えるかもしれませんが、削減効果の方が大きければ、実施します。

また経営の視点があれば、新規投資を行い、IT以外のコストを削減することも検討します。IT支出が増えても、それ以上のコスト削減が見込めるのであれば、実施します。  一例として、弊社お客様は経営視点でIT支出の見直しを行い、支出額が大きいシステムの「保守・運用費」を5割以上削減しました。

このように会社全体でのリスクや効果を勘案して、IT支出の見直しや削減施策の優先付けを行えるのは、経営の視点を持つ経営者や経営企画部の方だと考えます。

ではどうやって、経営が旗を振りIT支出削減を進めれば良いのでしょうか?

まずはIT支出の経営視点での把握から

NRIの調査によると、約7割の経営者は自社のIT支出額について知らない、もしくは総額しか把握していません。これはIT支出の内容が、経営者にとって分かり難いからだと推測します。サーバーとかルーター等の専門用語がIT予算に記載されていても、それが経営にどう役立っているのかが分からなければ、経営者は投資判断できません。情報システム担当者らに、「この機器がないと業務に支障が出ます」と半分脅されて、渋々調達の承認をしている経営者も多いのではないでしょうか?

IT支出を適切に把握できていなければ、効果的なIT支出削減は進められません。まずは経営者が理解し、判断できる形式にIT支出を集計することが、IT支出削減の第一歩だと考えます。具体的には、経営指標や経営にもたらす効果により、IT支出を分類・集計します。また削減策を検討するためには、機器費、作業費等で分類する必要もあります。これにより、経営視点での優先度を加味したIT支出削減策の検討・判断ができるようになるのです。

さらにIT支出を適切に把握できていれば、同じIT支出額でもより経営に貢献するIT支出が可能となります。

今回の弊社レポートには、IT支出の集計例、削減事例、またIT投資体質が簡単にチェックできるチャートがついています。ぜひ、ご活用ください。

弊社は、企業のIT支出を経営者が把握・判断しやすいように整理・分析し、削減ないし改善案を提示するサービスを提供しています。またお客様の立場でIT支出削減の検討・推進を補佐または代行を行っています。IT支出に疑問をお持ちでしたら、一度ご連絡ください。(終わり)

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