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100円のコーラを1000円で売る方法 3(永井孝尚)に見るフリービジネス

2013/10/12
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売上を伸ばそうと日々努力をしている企業。
しかし、時にその努力に対して壊滅的なダメージを与える様な環境変化が起きる時があります。

毎年10パーセントの売り上げ増を何年も続けてきた企業が、
ある時期を境に突然売上が伸び悩んでしまう、激減してしまう、
そんなことが起きることがあります。

経営環境が突如大きく変わった時にそのようなことが起き得ます。

例えば、海外の工場で生産された製造コストの圧倒的に安い製品が国内に入ってきた場合、これまでの営業では全く太刀打ちできない様なことがあるでしょう。

100円のコーラを1000円で売る方法 3(永井孝尚 著)は
破壊的な競合他社が突如マーケットに参入して
業界地図が一瞬にして塗り替わるような、まさに「破壊」的な
経営環境の変化について、
フィクションのストーリーを通じて面白く、分かり易く紹介しています。

この本で登場する、ガンジーネットジャパンは、その破壊的な競合他社です。
ネット上で使える無料の会計ソフトを提供して、広告収入を収益とするビジネスモデルの会社です。海外ではすでに圧倒的なシェアを持つ無料の会計ソフトがいよいよ日本に上陸という設定で描かれています。

一方、この新規参入に対して迎え撃つのは、国内の会計ソフト大手の駒沢商会。国内ユーザーの細かいニーズに迅速に対応し、常にアップグレードされた最新バージョンを提供しつつ、サポート体制も充実している老舗のIT企業という設定。

この話は、日本に上陸したガンジーネットの会計ソフトが、
次第に駒沢商会を脅かして行くという形で話が進んでいきます。

話の設定で興味深いのは、
当初、駒沢商会は日本市場に新規参入してくるガンジーネットを自分達の競合とは見ていないことです。

それは次の2つの理由からでした。

1.会計ソフトとしての機能が劣っている
2.ターゲットとしている顧客層が異なっている

ガンジーネットのソフトは、会計ソフトとしては機能があまりにも少なすぎて、
駒沢商会のソフトが提供しているような高度な経理処理には不向きでした。

したがって、ガンジーネットは主に、
これまで会計ソフトなどを使ったこともないような、
個人事業の経営者が、確定申告のような、
簡単な経理でしか使えない。

つまり駒沢商会のターゲットとしている企業の複雑な会計業務では使えない、
という判断で自分達の競合ではないと決めつけていました。

しかし、このガンジーネットが日本に上陸後、
瞬く間に市場のシェアを奪っていく様子がこの本では描かれています。

この話は、あくまでもフィクションです。
しかし、これと似た様なことが現実のビジネスで数多く起きています。

Googleが提供するGoogleMapはインターネットで世界中の地図をみることができるサービスです。しかも無料で使うことができます。
これによって、これまで地図情報を有料で提供してきた企業は大打撃を受けました。

インターネット上でニュースを配信しているポータルサイトもそのほとんどが無料で記事を読める様になっています。このことで既存の新聞・雑誌の購読数が年々下がって来ています。

最近では当たり前のように使われている、Facebook。
この中にあるフェイスブックページを使えば、企業の情報を無料でネット上に広げていくことができます。
これによって、これまであった様々な企業向けのPR商品が大きな影響を受けています。

このように、現実の社会でも、破壊的な競合を様々な場面で見ることができます。

これらに共通することは、フリービジネスであるということ。
商品・サービス自体は無料で提供し、
その周辺のニーズに対して有料オプションを提供するモデルです。

例えば、Googleであれば、地図情報は無料で提供する一方で、
広告掲載というオプションを有料にしています。

フリービジネスの特徴は2つあります。

1つは、無料サービスが前面にでてくるということ。
このことで一気に見込み客を広げて行くことが可能です。

そして2つ目、恐らくこの2つ目が最も重要なのではと思います。

それは、「無消費者」に集中するということです。

「無消費者」とはイノベーションへの解 実践編(クレイトン・クリステンセン 著)という書籍の中で使われている言葉ですが、
文字から推測できるとおり、お金を払う顧客ではないということです。

Googleが提供しているサービスは、お金を払わないこの「無消費者」向けに開発されています。

Facebookも「無消費者」向けに開発されています。

これまでのマーケティング理論では、
お金を払ってくれる顧客をセグメントし、その属性を分析して、
その顧客をどのように囲い込むかという視点で考えて行きます。

しかし、フリービジネスでは、無消費者に視点があります。
無消費者に視点があることで、
サービスの内容は、シンプルかつ低価格なものに向かって行きます。

FacebookやTwitterを初めて見た時、
ほとんどの人が思ったはずです。
「こんなもの、いったい誰が使うの?」

しかし現在、Facebookを初めとするソーシャルメディアは世界中で何十億人にも使われているサービスになっています。

そして、「こんなもの、いっかたい誰が使うの?」と思われた
Facebookのフェイスブックページは、
今や企業がこぞって自社のマーケティング活動として活用しています。

破壊的な競合は、このフリービジネスによってもたらされています。

100円のコーラを1000円で売る方法 3(永井孝尚 著)は
このような破壊的なイノベーションが様々な場面で起き得ることを示唆している本です。

また、この中で触れられている「無消費者」という概念を理解すれば、
あなたの会社でも、革新的なイノベーションを起こすことが可能であるとも言えます。
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