共創スクエア

CRエステート株式会社

事業再構築のヒントは、社内に隠れている

経営者の将来ビジョンと決断力が会社改善の原動力

大崎 史雄

共創スクエア
眠っている資産で事業を再生する
米国発の金融危機以降、業績不振に悩む企業は少なくないと思います。ですが、この経済状況は一過性のものだと考えています。こうした状況だからこそ、経営者は前向きになり、企業の抱える問題を改善していくきっかけにすることができると思います。
具体的に、どのように改善するのか。私たちが手がけた事業再構築の事例が参考になるかもしれません。
1つは、建設会社のケースです。事業を進めていくにあたって、金融機関との交渉が必要でした。そのため、事業を再構築していくことが不可欠でした。こうした場合、社内にどのような「眠れる資産」があるのかを探し、それを活用していくことがポイントとなります。このとき注目したものが、これまでの事業を通じて蓄積された膨大な資料でした。建設会社ですから、さまざまな図面や許認可資料などが書庫に眠っていました。そこから出てきたものの一つが、かつて行なっていた地元での戸建住宅の建設時の資料でした。数十年前の住宅は、リフォーム時期を迎えていました。図面があれば、リフォームを提案しやすくなります。そこで、地元の住宅に対するリフォーム事業を新たに立ち上げることにしました。さらに、過去に手掛けた道路工事の図面などもありましたので、敷設した下水道のメンテナンス事業などにも取り組みはじめました。

もう一つは、かまぼこ屋さんの例です。今はかまぼこを製造するにあたって、原料となる魚はカッターで細かく切り刻んでいますが、かつては石臼ですりみにしていました。実は、石臼ですりみをつくった方が、食感の良い、食べ応えのあるかまぼこができるのですが、製造に手間がかかるため、使われなくなっていたのです。しかし、手作りのかまぼことして高級感のある商品には一定の需要が見込まれました。使われなくなった石臼は大きく、少量の高級品の製造には向いていませんでしたので、金融機関から融資を受けて小さな石臼に作り直し、かつての手作りかまぼこを復活させたのです。
この他にも、ホテルにおける顧客情報の活用、運送業におけるNOx法未対応車の地方業務での活用に取組みましたし、パチンコ店では台数を減らしてゆったりとパチンコを楽しめるよう、ホスピタリティの向上にも取組みました。もちろん、場合によっては活用しきれていない不動産を売却し、身軽になって事業を再構築していくケースもあります。
資産探しには社内にヒントがある
企業の資産には、不動産や設備をはじめ、人材や技術、ブランドといった形のない資産も含めてさまざまなものがあります。CREとは、企業不動産を意味しており、低稼働不動産の用途変更やリノベーションによる資産価値の向上は、私たちの業務の一つです。同時に、私たちは無形資産についても、資産価値の向上を提案していくことができます。
では、社内にある無形資産は、どのようにして探せばいいのでしょうか。私たちの経験から言えば、ヒントは社内にあります。クライアントの担当者とざっくばらんに話していく中で、見当がついてくるということは、少なくありません。場合によっては、気付いているけれども、言い出せなかったことなのかもしれません。

人材にも、同じことが言えます。事業再構築には、キーパーソンが不可欠です。実は、経営者から、事業再構築にあたって、幹部候補を面接してくれ、と言われることがあります。思い切って登用したい人材がいるのかどうか、探して欲しいということです。こうした場合、たいがいは見つかります。経営者が推薦する候補の中に、意中の人はすでに入っているのです。しばしば、若い人を登用することになるのですが、経営者としては、目をつけていたけれども、まだ若いという周囲の目を気にして、思い切った判断ができないでいた、ということがあるようです。
そのように考えて行くと、隠れた資産というのは、まったく新しいものではなく、すでに気付いている、あるいは目をつけているにもかかわらず提案できなかったものが多く、誰かに指摘されてはじめてその価値に気付くものなのだと思います。
また、会社を活性化させていくためには、隠れた資産を活用するように、思い切って若い人材を登用していくということをおすすめします。あえてヘッドハンティングをしなくても、社内にはキーパーソンとなるスペシャリストがいると思います。
銀行は株主と同じように考える
さまざまな企業の経営者とともに、金融機関との交渉を行なってきました。その上で言えることですが、経営者に必要なものは何かというと、はっきりとした将来のビジョンを持つことだと思います。どれだけの売上を上げて、どれだけの利益を出していくのか。企業として何をしていくのかを、はっきりと示すことが、経営者の仕事です。
資金調達や返済猶予をめぐって、金融機関と交渉するにあたって、何が決め手になるかといえば、経営者の熱意です。強い想いを持っていれば、相手に通じますし、多少、不器用くらいでも大丈夫です。かえって、お金に通じていると、不信感を持たれるかもしれませんし、何より金融機関は、ウソは必ず見抜きます。ですから、細かいお金の計算については、多少弱くても、動揺せず、私どものようなコンサルタントにおまかせしていただければ、大丈夫です。
銀行などの金融機関は、企業にとって株主みたいなものです。IR(investor relations)というのは、株主対策だけではありません。Debt IR、すなわち借入金に対しても、返済の確実性や信用力などを示すことが求められます。
パートナーがいることで、経営者は変わる
私たちの立場は、お客様にとって、社外の非常勤顧問のようなものだと考えています。そうした立場があってこそ、金融機関との交渉ができるというのはもちろんですが、同時に私たちが経営者とともに事業再構築に取組む過程で、経営者自身がどんどん変わっていくということも、目の当たりにしてきました。
私がよく感じるのは、「決断が早くなる」ということです。会議にはゴールが設定され、どうしても結論が出ない場合であっても、誰がいつまでに何をやるのかという宿題ははっきりさせるようになります。
また、経営の責任をとるということに前向きになっていきます。社員に分析や提案を求めることはあっても、その結果については自分たちが出した結論に基づくものだとして、責任は自分で引き受けるようになります。

さらに、経営者が変わることは、社内に活気が出てくるきっかけともなります。
経営者というものは、なかなか社内で弱味を見せることができない存在です。迷っていても、自分で決断するしかなく、他の取締役や幹部社員に本音を打ち明けるような相談はなかなかできないでしょう。
こうしたとき、社外の非常勤顧問であれば、社内ではなかなか出せない本音での相談がしやすいでしょう。また、十分な信頼関係が築ければ、弱味を見せられる相手ともなります。迷っていて、自分一人では出せなかった決断について、背中を押してもらうことにもつながります。こうした関係が構築されることも、経営者の変化の理由となっているのかもしれません。
人としてお付き合いできるコンサルティング会社
私自身は、かつて外資系のコンサルタント会社で事業再構築などの業務にあたってきました。しかし、大きな会社のスタッフとしてコンサルティングを行なう場合、どうしても業務改善に向けた数字などを盛り込んだ計画を作成して終わってしまうことが多いと感じていました。当社の設立のきっかけは、よりお客様の切実なニーズに応える仕事をしたいと考えたことによります。
私たちは、数字にとどまらない充実した計画を立案し、社内改革・改善を進めていく過程をお客様に伴走していきます。多くのお客様は、計画だけではなく、金融機関からの手当てがきちんとなされるまで、不安を抱えていると思います。ですから、業務改善のゴールまで、おつきあいしていく必要があると考えています。
新規投資であれ、現有資産の改善であれ、実際の組織にその役割と目標数値を担わせ、目標達成のためのアイディアや実行力を求める体制を作ると、思いもよらない新しい戦略が出てきたり、社内に活気が出てきて、会社には自然と自助改善力が出てくるようです。

また、財務基盤が厚ければこれらの改善は自己資金で賄うことで会社単体での収益増となりますが、一般的には新規投資であればそれに見合った資金調達を要し、現業の改善であればその改善期間に一時的に悪化する資金繰りが心配になるところです。
当社では、このような企業資産の新規投資、あるいは事業改善について、会社と諸施策を検討し、その内容を経営計画にまとめて、必要な資金について金融機関と交渉することを業務としています。
ある程度客観的な内容を満たしている経営計画であれば、金融機関は尊重してくれますし、目に見える目標として社内に浸透するので自助改善にもつながります。
私たちは、お客様との人間的なおつきあいを通じて、経営計画を共に検討・立案し、事業改善をご支援していきます。(終わり)
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