共創スクエア

マネジメント・カレッジ株式会社

経営シミュレーションによる次世代リーダー育成法

体験学習を通して経営の俯瞰視野育成と知識の体系化を図る

松原 直樹

共創スクエア

環境変化の激しい今の時代、企業間競争の激化もさることながら、顧客ニーズも多様化・細分化しています。

そうした環境変化への企業の対応は、社内分社化やプロジェクトチーム化することで組織を細分化、あるいはフラット化の傾向にあります。一般にSBU(Strategic Business Unit)と言われるこうした事業単位では、それぞれに利益責任と戦略発想を持たせるのが特徴です。

こうしたSBUが増えれば当然、その数分だけの戦略的リーダーが必要です。戦略的リーダーとは、従来型のタテ割りの管理型リーダーとは違い、社内では横のチーム、斜めのチームを構成・指揮したり、場合によっては社外の人ともチームを組める横串型のプロデューサー型リーダーです。当社が次世代リーダーと呼んでいる人たちとはこういうイメージです。では、具体的に次世代リーダーに必要な条件とその習得へ向けたアプローチについて、以下に説明していきます。

行動が人を創る

リーダーに必要な条件は、まず夢やビジョンを形にする「経営知識」。これは当然、必要です。そして自ら先頭に立って組織を変革する「リーダーシップ」。この2つがリーダーに必要とされる条件ですが、前者はラーニング(学習)で習得可能な領域なのに対して、後者はトレーニング(訓練)が必要です。

当社では後述するマネジメントゲームという経営シミュレーションなどのトレーニングなどを行い、戦略思考や達成行動などのリーダーシップを習得するわけですが、特徴的なのはそのアプローチの方法です。

図1の「資質と行動の概念図」にありますように、従来型のトレーニングの多くは、資質を身に付けて行動を促すというアプローチ。つまりこの図でいう真ん中の資質の部分をいかに変えるかに注力するわけです。しかし、そのアプローチにはそもそも無理があります。
なぜなら資質とは不可視なものであるからです。さらに人間の心の奥にあるものであり、他者の助言やアドバイスによって容易に変わるものでもないからです。
ではどうやって資質を変えていくのかというと、よく「行動は内面の鏡」と言われますが、行動や行動特性という可視できる部分を変えることで、新しい資質を創り上げる。当社ではそうした手法を用います。

これはK.レビンという学者の「行動が人を創る」というフィールドセオリー、B(行動)=f[P(資質),E(環境)]の心理学的理論がその根底にあります。

新しい資質を創り出す

たとえば東京港区では条例で公道での「歩きタバコ」が禁止されていますが、外で歩きタバコをしている人の行動をBとするなら、Eの環境は公道です。われわれは公道で歩きタバコをしている人を見ると、「社会性の欠けた人だな」と思いますが、これがその人の資質Pだとすると、この資質を変えるには、望ましい環境下での「歩きタバコ」という行動を変えていく必要があります。

「公道では歩きタバコをしない」という行動を繰り返し繰り返しトレーニングすることで、それによって新しい資質を創っていく。

当社ではそれをリーダー育成のスタンスから、マネジメントゲームというリアルな経営の疑似体験を通して、リーダーとしてふさわしい行動を繰り返すことで習慣化し、次世代リーダーとしての資質の定着化を図ります。

人事評価の偏りも払拭

こうしたトレーニングやラーニングというのは、次世代リーダー育成の中の位置付けとしてはあくまでも「機会均等な教育」の場であり、すべての社員に対して等しく提供されるべきものだと考えております。

その上でアセスメント(評価・査定)と選抜による適正な評価がなされ、インキュベーション(起業支援)という流れになるわけですが、「トレーニング」と「アセスメントと選抜」の間は立場を変えたりしながら何度も繰り返す必要があるわけです。

その中で当然、現場の上長の人事評価も必要になるわけですが、こうしたマネジメントゲームによる体験学習の場が介在することで、評価の偏りが薄れ、より客観的な評価ができるようにもなります。

研修に一貫性を持たせる

また、リーダーなどの人材教育においては一貫性を持たせることも大切です。なぜなら、そうすることによって学習したことが系統的に整理されやすいからです。

体験学習とは、経営に関する棚と引き出し(枠組み)を作る場です。そこに洋服(知識や情報)を納めるにしても、しっかりとした棚と引き出しがないと納まりません。知識や情報とは断片的なものですから、所定の場所に納まって初めて全体の意味が分かってくるわけです。

コンパクトな経営のゲームを行うと、経営を上から俯瞰した状態になりますから、「経営とはこういうものなのだな」という大枠が分かるようになります。そうした経営の俯瞰視野を作る方法は、なかなか現場では味わえない体験学習ならではのアプローチだと思います。(終わり)
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