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企業の経営改革は、社長が本気になってリードしないと不可能

 

マネージングディレクター 赤羽雄二

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円安などの影響で日本企業の業績は回復傾向にあるとはいえ、グローバルで競争する企業と比較すると見劣りがする。むしろ一時的な回復にすぎず、長期的な経営の点では深刻な課題を抱えているのではないだろうか。

30年にわたって大企業の経営改革を支援してきた赤羽雄二氏に、現在の大企業の課題と解決策や将来の展望を語っていただいた。

【ビズテリア経営企画 編集部】

バブル経済の成功体験が経営改革の足かせ

現在、日本の大企業は低迷していると言われています。景気が回復してきたといっても、大企業の時価総額は、アップルの90兆円、グーグルの60兆円と比較し、トヨタ自動車などの例外を除いて、数兆円台です。

日本の大企業が、時代に対応した変化ができない理由には、バブル経済の成功体験があると考えています。いわゆる成功の復讐です。

現在、大企業の経営者の年齢は、若くて55歳から、上は65歳くらいです(70代の実力者も多数いらっしゃいます)。この方々は、日本企業が急成長し大活躍していた85年には25歳から35歳であり、90年頃まで続いたバブル経済の右肩上がりを経験してきました。社会人の最初の5~15年の成功経験、前向きな気持ちから完全に抜け出すことはむずかしいと思います。

言葉としては真剣、深刻な発言を繰り返していたとしても、心底ではそこそこの経営ができていれば、自分たちは生き残れると思っているのではないでしょうか。

しかし、今のような経営を続けていては、じり貧だということは明らかです。

深刻視できるかどうかという意味では、バブル経済が崩壊した後に入社し、右肩下がりしか経験していない、今の部長、課長クラスの方々が経営を担うようになるまで、待たなければいけないかもしれません。

社長が将来像の絵を描き、方向転換をリードしていくことが必要

次の時代に向けて会社が生き残っていくためには、会社をどのように変革していくのか、3年後、あるいは5年後の姿を、経営者が描くことが、まず必要になります。これは詳細なものである必要はありません。数枚ないしは1枚の図で十分です。

経営改革を本気で進めるには、社長直下に経営改革推進チームを置き、各部門から優秀な人材を集めて、経営改革のスキル、ノウハウを開発、蓄積していく必要があります。経営改革は素人が見よう見まねでできるような簡単なものではありません。社長が指示したからできる、というようなものでもありません。経営改革のプロを活用し、社長の最優先課題として本気で取り組むべき難事業です。

経営改革においては、既存事業の構造改革による収益拡大に加え、成長が見込めない事業からの撤退も、多くの場合必要になります。当然、社内で反対意見が出ますが、社長にはそれを押しきる勇気とリーダーシップが不可欠です。それを避け、社員の誰にでもいい顔をしていたい社長には経営改革は推進できません。

一番むずかしいのは、3年後、5年後の柱となる新事業を立ちあげることです。社長自身も、また経営幹部にも、新事業を成功させた経験者はごくわずかしかいないのが実情です。つまり、社長の多くは、自分が経験したことのない状況下で強いリーダーシップを発揮しなければならないのです。そうだとしても、社長自らが新事業の旗振りをしないと、立ち上がることはまずありません。社内にない事業であれば他社を買収するか、事業提携を進めることになります。

製造業でも、新事業の多くが何らかのサービスあるいはプラットフォーム事業になってきます。ハードウェアだけ売っていては到底儲からない、という時代になったからです。製造業の最たるものであったGEは、慧眼にも数十年前に、ジェットエンジンというハードウェアだけではなく、そのサービス、メンテナンス事業を始め、急速に成長させました。

現在では、あらゆるものがIT化され、ネットワーク化されているので、新事業といってもサービス事業、プラットフォーム的な事業になることが増えています。しかも、以前のように少数プロジェクトへの大規模・長期間投資ではなく、もっと多くのプロジェクトに少しずつ資源を投入し、3カ月くらいで新しいサービスを開発するようなスピードが要求される時代に変わりました。

20年かけて新しいLEDを開発する、といったようなことはもはや通用しません。3年、遅くとも5年後には事業化する必要があります。

幸い、ウェアラブル、IoT、自動運転車、デジタルヘルスなど、莫大かつ急成長が期待される分野はいくつもあります。

そして社内だけでできなければ、社外の人を全力でスカウトする必要があります。もちろん、既存事業に合わせた人事制度、組織運営方針を根本から見直す時期に来ていることは言うまでもありません。

経営の風通しを良くすることも必要

日本の企業は、立派な大企業も中小企業も取締役会がほとんど機能していません。社長に引き上げられた社内取締役ばかりであり、社長への牽制、意義ある提案は全くできていないからです。

社外取締役を2名は置こうという動きがありますが、視野が広く社長に遠慮なく発言できる人材が少ない上に社長側も必ずしも歓迎していないため、健全化まであと5~10年はかかると見ています。

本当は社長も経営幹部ももっと外国人を採用し、グローバルな視点から経営すべきです。トヨタ自動車、武田薬品などごく一部の会社がそういった動きを進めていますが、英語力のなさが足かせとなって中々進みません。

旧態依然とした大企業が本気で取り組む経営者によって脱皮を図ることができるか、徐々に滅びていくか、大変な瀬戸際に来ています。

(終わり)
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