共創スクエア

株式会社 TARM

難しくない業務改革

職員のモチベーションを上げ、価値を生み出す改革へ

代表取締役・税理士 冨田一栄

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今の職場は、さまざまな立場の人が混在して働いている。正職員がいれば、非常勤職員もおり、派遣社員やアルバイトがいるかもしれない。そうしたなか、立場が異なる人をまとめ上げ、業務改革を推進していくことが大変難しくなってきているのではないだろうか。

異質な人材の坩堝ともいえる公立病院の事例を中心にコンサルティング業務を行っているTARM代表の冨田氏に、業務改革を成功させるポイントについてお伺いした。

【ビズテリア経営企画 編集部】

課題が山積している公立病院

ご存じのように、日本の公立病院の8割近くは赤字経営だと言われています。その要因は多岐にわたります。

たとえば、給与体系がいびつになっていることがあげられます。公務員の賃金体系は年功序列のままで、50代以上の給与の高い人が相対的に多くなる一方、若いスタッフに回すお金が少なくなっている。良い人材を採りたくても、臨時職員としてしか採用できないなど逆ピラミッド型の給与体系になり、そこから身動きがとれなくなっています。頑張った人に報いる制度ができていないのです。

また、公立病院は立場の異なる人の集まりですので、組織作りが難しい。医師の多くは、病院に属していながら、派遣元である大学の医局を向いて仕事しています。また、医療のプロではありますが、経営に関してはまったくの素人である場合がほとんど。科学者ですので、良い機材や薬を導入しようとします。けれども、それが病院の収入に見合ったものかどうか考慮しない傾向があるのです。さらに、医師達は高い教育を受けているため、プライドも高い。押しつけの組織作りですと、反発したり、辞めてしまったりすることも。気持ちよく働いてもらうためのモチベーションアップが欠かせません。

一方、事務の担当者は市町村の役場からの出向であるため、行政の方を向いています。こちらも、優秀でお役所の仕事についてはよく知っていますが、病院経営に関しては素人同然。しかも、定期的に人事異動を繰り返しているため、数年経てば病院以外の部署へ移ってしまう。また、新たに異動してきた人が一から学び直さなければならず、スキルや経験が蓄積されません。

このように、公立病院で働いている人で、本当に病院の経営や組織のことを考えている人は少ないと言わざるをえません。これでは、業務改革を行うことができないのは当然です。

業務改革を成功させるには

以上は公立病院の例でしたが、同じような状況で悩まれている企業もあることと思います。こうした状況において、業務改革を成功させるにはどうしたらいいでしょうか。

まずは、経営の現状と問題点をしっかりと把握することです。「何を当たり前のことを」と思われるかもしれませんが、できていない企業があまりに多い。自社の実力を過大評価していたり、見たくないことには、目をつむったりしています。

よく見かける例として、銀行から天下った方を経理部長さんにしている企業があります。借り入れしやすくなるというメリットがあるのでしょうが、本当に借り入れしなければいけないのか、よく精査して決めているでしょうか。税理士として多くのクライアントに接した経験から、本当は必要ないかもしれないのに、銀行の勧めるまま借金している企業を数多く見てきました。自社の状況をよく理解していれば、不要な借り入れを避けることができます。

1億5千万円の赤字を1億5千万円の黒字へ

赤字で苦しんでいる医療法人のコンサルティングを担当した時のことです。経営者は医師でなかったので、現場のことをよく理解していませんでした。現場から言われるがまま資材を購入したり、必要以上に職員を多く抱え、年間1億5千万円の赤字を垂れ流しており、資金繰りにも苦しんでいました。業務改革が早急に必要な状況です。

そこで、いかに無駄遣いしているかを知ってもらうため、はじめはインフルエンザに必要なタミフルの1本あたりの仕入価格を調べ、また実際に使用した本数と在庫状況の確認を継続的に手計算で集計してもらいました。さらに内科、外科など科目別に収益費用を案分して見てみる、キャッシュフロー計算書を作って資金の流れを見てみる、などさまざまな視点から病院の問題点を知ってもらいました。最初はピンときていないようでしたが、ひとつずつ現状を知るにつれ、事態の深刻さがわかってきたようです。こうなれば、しめたもの。トップダウンで業務改革が進み、1億5千万円の赤字が、1年半後には1億5千万円の黒字へと転換したのです。経営状況を知るという当たり前のことをするだけで、劇的な効果を上げることができるのです。

正直に言えば、上記のような作業はソフトを導入すればすぐに集計してくれます。しかし、ソフトを入れただけでは「気持ち」が変わりません。少々面倒でも、手で集計してみることでおもしろさもわかりますし、自社の状況を正確に感じ取れるようになるはず。それからソフトを導入しても遅くはありません。

現場でも必要な現状把握

現状をよく知ることは、経営者にとどまらず、現場の従業員にとっても大切なことです。業務改革を行う上で必須と言ってもいいでしょう。

たとえば人事評価制度を導入する場合、トップダウンで行えば、現場から反発を招くかもしれません。「トップは給料を下げようとしている」などの疑心暗鬼に陥り、心理的な抵抗が生まれるからです。

そこで、人事評価に必要な日常業務を従業員に書き出してもらいます。毎日やる仕事はもちろん、定期的に実施することやクライアントごとに異なる業務など考えつく限り書き出してもらいます。それらを分類し、業務ごとに難易度をつけることで、人事評価のもとになる資料ができあがります。こうして自ら参加することで、トップの押しつけではない、納得感の高い人事評価制度の導入が可能になります。結果として業務改革が進むだけでなく、作成した資料は業務マニュアルにもなり、OJTでも使用できるなど副次的効果も期待できます。

正職員はもちろん非常勤職員や派遣社員の方でも自分の業務を洗い出すことで、今まで以上にモチベーションが高まり、自分の仕事に対して前向きに取り組んでもらえると思います。

長期的な視点を忘れない

こうした作業は、総じて時間がかかります。何でも短期間で達成しようとするのではなく、すぐにでもやらなければいけないことと長期的な取り組みを分類し、それぞれ作業を進めなければ業務改革はうまくいかないでしょう。

私は、コンサルタントとしてはもちろん、税理士としても数多くの企業の業務改革を見てきました。実際の作業は煩雑で泥臭いもの。しかし、最終的に成功するまで根気よくお手伝いさせていただくことが弊社の特長です。業務改革がうまくいかないとのお悩みがありましたら、弊社までお声がけください。御社に最適なソリューションを提供させていただきます。

(終わり)
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