日本酒を広めようとする一風変わった取り組みが脚光を浴びています。
名古屋の酒類卸会社の女性社員が中心となって始めたプロジェクト、
その名も「おちょこガール」。
女性限定のイベント、「おちょこガール会」を開催し、
日本酒のおしゃれな楽しみ方や、日本酒に合う食事を紹介して、
日本酒好きの女性達の横のつながりを広げる企画です。
日本酒はどちらかというと、
男性向けで、女性には敬遠されがちなイメージがあります。
「おちょこガール」では、「男の世界」と思われがちな日本酒を、
あえて女子に限定して、女子力で新しいマーケットを作りだそうとしています。
日本酒の国内販売はこの10年間で3割も減少するなど、低迷が続いています。
この状況を打破しようとする試みはこれまでも多々ありました。
しかし、それらは、主に海外にマーケットを切り開こうというものです。
海外では日本食ブームということもあり、
日本酒の輸出額はこの10年で倍以上に伸びているという報告もあります。
現在行われているTPPの交渉でも、日本政府は参加国に日本酒の関税撤廃を求めるなど、
日本酒の海外展開については、国も後押しをしている状況です。
しかし、この「おちょこガール」は、それとは一線を画しています。
対象としているマーケットが国内であり、そして20代の女性という点が
大きく異なっているのです。
しかも「おちょこガール」の面白さはそれだけではありません。
着目したいのは次の2点。
1つ目は、売り出し方。
「おちょこガール」では、日本酒そのものを売り出すというより、
女の子が日本酒を飲むというスタイルを売り出そうとしているようです。
メンバーの1人は、時事通信の取材に対して
「酒類業界でも『山ガール』のような女子力が注目される現象を広めていきたい」とコメントしていました。
そして、着目したいもう一つの点は、広め方。
「おちょこガール」という言葉こそありますが、
では、具体的にどんなことを指すのか、
何をもって「おちょこガール」と呼ぶのか、
ということが、まだはっきりとは固まっていない感じを受けます。
従来のマーケティングであれば、
まずは具体的なイメージをしっかりと決めてから発信するでしょう。
しかし、意図的なのか、たまたまなのかは、分かりませんが、
その辺の具体化がされていない段階でプロジェクトはスタートしています。
これは準備不足とも取れます。
別の見方をすると、
イベントの参加者と一緒に「おちょこガール」のイメージを具体化しているとも取れます。
以前の記事で、
共創マーケティングという言葉を取り上げましたが、
この「おちょこガール」はまさに、これに当てはまるような印象を受けます。
これまでは、売り手が、「この商品はこういうもの」とイメージを決めて、
それを買い手に知らしめるというやり方が一般的でした。
しかし、ツイッターやフェイスブックのようなソーシャルメディアがある今日、
消費者とのインタラクティブなやり取りを通じて、
商品イメージが次第に形成されていく手法が注目を集めつつあります。
「おちょこガール」でも、参加者がイベントに参加したり、
その感想をフェイスブック上で共有していく過程の中で、
イメージが次第に出来あがっているような感じを受けます。
そしてその結果として、日本酒の新しいマーケットが出来ていく。
「おちょこガール」の背後には、これからのマーケティングのトレンドが見え隠れしているように思えます。
これから、「おちょこガール」がどのように進化して行くのか、
その動向に注目です。